「潔く柔く」完結と全巻メモ

13巻を読んで、また1巻から読み直して、この漫画に出てくる登場人物みんな、昔から知ってるような気分になる。それぞれにちゃんと個性があって、彼らの一人一人が、物語の後も存在しているような、そんな気持ちになる漫画でした。本当に面白かった。

潔く柔く 13 (マーガレットコミックス)

潔く柔く 13 (マーガレットコミックス)

13巻を通して読んでみると、亡くなった幼なじみの男の子のことを思い出にすることができない「カンナ」という女の子の物語に、もう1人の主人公の物語が混ざりあうというのが大筋だったのだなということがわかる。けれど、それが一本の物語ではなく、様々な視点からのそれぞれの思いとして描かれているからこそ、ひとコマのためらいや、勢いにも意味が生まれてくる。そこが魅力だと思う。
潔く柔く」は各話ごとに、誰に視点があるのかがはっきりわかるような構成になっている。台詞と、モノローグと、表情と、登場人物が見ているものとを、作者が編集して見せることができるというのは漫画の特徴でもあると思うのだけど、そうやって登場人物それぞれの視点を体験してきた読者にとって、画面にある「意味」は物語を読みすすめるほどに増えていく。
それってすごく不思議な感覚で、でもそのように読めることがとても楽しいなと思いました。

誰にも思いや願うことがあって、敵/味方、好き/嫌い、なんて立場によってかわる。和解や成就だけを“よいもの”として描くのではないところが、この物語の力強いところだと思います。
潔く柔く」は、彼らがそれぞれの距離を測りながら、“すべらかで自然な位置”に立つまでの物語だったのだと思いました。それが「潔く柔く」とタイトルの意味するところでもあるんじゃないでしょうか。

「だれかもつれた糸をヒュッと引き 奇妙でかみあわない人物たちを すべらかで自然な位置に たたせてはくれぬものだろうか」(『バナナブレッドのプディング』/大島弓子


13巻には、最終回の後に番外編として百加のお話が収録されている。最終回のあとのこの番外編で、もしかしたらまだ、この続きが読めるんじゃないかなんて期待をしてしまったりもした。
読みたい。大好きです。

以下、全巻メモとか余談です。

ACT1(1巻収録)

  • 登場人物…梶間(社会人)

梶間が好きになった第1話。完結までいくと、このお話が第1話ってのはちょっと不思議だけど、好きな話です。

ACT2(1巻収録)

  • 登場人物…カンナ、朝美、春田、真山(高校生)
  • ようやくメインの登場人物集合。でもこの巻読んでる時点ではまだわかってなかった。

ACT3(2巻収録)

  • 登場人物…梶間、瑞希(高校生〜6年後)
  • 梶間がはじめて怒るシーンが好きです。あと犬の名前の由来の話も。

ACT4(2〜3巻収録)

  • 登場人物…真山、亜衣、カンナ(大学生)
  • 個人的に特に好きな2人です。亜衣が真山のことを「あの暗い顔が 好きで」というシーンがとてもいい。

ACT5(3〜4巻収録)

  • 登場人物…清正、一恵、カンナ(高校生)
  • ハルタのイトコ清正(キヨ)は、登場人物の中でいちばんバランスがとれてる人という感じで見てて安心する。キヨの彼女の描き方とかもうまいなーと思ったり。カンナと3人で遊園地に行くシーン、ベンチに座ってたキヨが、2人を迎えるシーンにぐっとくる。
  • キヨは彼女のこと悪く言わないところがすごくいい。
  • あとこのACT5のラストに一恵と亜衣がすれ違うシーンがある。

ACT6(5〜6巻収録)

  • 登場人物…禄、梶間、三千花、愛実、ちょっとだけ瑞希(高校生)
  • ここから禄(ロク)編。ちょっと読むのがしんどいところ。というのはロクが愛実に対して感じてるプレッシャーっていうのがすごくよくわかる(気がする)からだと思う。
  • 三千花が梶間に「女らしくなったね」って言われるシーンがいい。三千花は好きなキャラクターなので、三千花のその後も読みたかったなー。

ACT7(6〜7巻)

  • 登場人物…千家百加、中西(高校〜大学)、カンナ、古屋(大学生)ちょっとだけ真山
  • 登場人物の中で一番素直に腹黒く、じたばたした末に変わってく人が百加なんじゃないかなと思う。カンナとの女の戦いは怖かったけど、カンナと百加、2人とも「嫌なやつ」には見えないように描くところがすごい。

ACT8(7〜8巻)

  • 登場人物…音々、禄、梶間、福ちゃん、愛実(禄大学時代)
  • ACT3の梶間が教育実習行った後くらいのお話。禄にひと目ぼれした音々のガッツがすごい。あと、電話のやりとりしか出てこないけど、梶間と瑞希がやっぱり好きだなー。

ACT9(9巻)

  • 登場人物…朝美(大学生)、伊吹と瑠璃
  • ACT2以来の朝美。朝美のこと好きな伊吹(高1)が、押しが強いようで気がきくキャラでいいです。その後がもっとみたいよ。

ACT10(10巻〜13巻)

  • 登場人物(前半)…カンナ、春田、清正(中学生)
  • 登場人物(後半)…カンナ、百加、禄、古屋(社会人)
  • 登場人物(11巻)…上にプラスして清正、一恵、梶間、ワンシーンだけ愛実、ワンカットだけ朝美
  • 登場人物…12、13巻はほぼ全員ちょっとずつ出てくる
  • 禄が第一印象で百加を気に入ったのは、三千花に似てるからなんだよなー。台詞にもあるけど、読み返すとやっぱりぱっと似てるなって思う。
  • モテまくるカンナ視点の話を読んでると、モテるってきっと大変なことなんだなあとかちょっと思ったりするけど、虫みたい、って台詞にはわらった。このバランス感覚が作者のうまいとこなんだろうな。
  • でもカンナのわけアリについて皆よくしゃべる。
  • キヨと禄が知り合いなのはなんでだろう。後輩って書いてあったけど大学なのかな。
  • 13巻の番外編は11巻p108の続きなんだな。
  • 12巻、キヨと一恵はその後がちらほらでてきて楽しい。あんなにチャラかったキヨが…とか思う。
  • 12巻、ACT1の梶間が出てきます。梶間いいよ梶間。
  • 13巻で大団円。朝美のメールにぐっときた。

番外編「切々と」

  • 登場人物…百加、古屋、カンナ、禄、真山など
  • 11巻の続きからのお話。カンナと百加の友情の描き方はきれいごとのない感じでいいなあと思う。
  • ページをめくったらなぜか古屋と待ち合わせしてるっていう展開にはかなりぐっときた。
  • 「素直でしょ」っていう古屋がいい。そこでかけひきしちゃう百加の不器用さは、あるよなああと思う。
  • おめでとう。

ちなみに

特に好きな登場人物は、梶間と古屋と真山とキヨ、瑞希と百加と亜衣が好きです。百加と古屋は番外編の影響だと思う。
13巻完結で大満足なんだけど、しいて言えばキヨと禄の出会いが描かれていないのだけ気になる。
その後が読みたいのは、朝美と伊吹、梶間と瑞希、真山と亜衣です。

あーほんと面白かった!!
きっとこれからも、何回も読み返すと思います。