「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」


先日、TBS RADIO「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」内のコーナー、シネマハスラーでの「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on少女たちは傷つきながら、夢を見る」の感想を聴きました。これがねーむちゃくちゃ面白かったです。

TBS RADIO ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

私は、一昨年の暮れくらいからAKB48 面白いなーと思いはじめ、紆余曲折あって今はもうすっかり大好きなんです。でも自分が「面白い」と感じている理由をうまく説明できる気がしなくて、これまで行ったコンサートやこの映画の感想なども特に日記に書いたことはありませんでした。でも、宇多丸さんの語り口はさすがに面白くって、聴きながら「そう!そうなんだよ」と悶えるところも多く、何度か聴き直してるうちに、これはちょっと自分の感想も書いてみたいと思うようになりました。

「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」は、AKBのドキュメンタリー映画としては第2弾となります。第1弾は岩井俊二監督、そしてこの2作目は、AKBのMVなどを数多く撮っている高橋栄樹監督による作品です。
この映画は、総選挙、被災地訪問、新チーム結成など、いくつかの軸で構成されているのですが、最も壮絶なのは、去年の夏に行われた西武ドームコンサート2日目の舞台裏だと思います。
メンバーそれぞれが多忙の中行われた、過去最大規模のコンサートであり、舞台裏は灼熱地獄、初日の夜には秋元プロデューサーからの「(メンバーが悪いわけではないけれど)僕が知る限り最悪のライブ」というダメ出しがあり、しかもリハーサルの時点で、AKB48の顔でもある前田敦子が一度倒れているという最悪の条件が積み重なった背水の陣。燃えるといったら不謹慎な気がしますが、フィクションだったらクライマックスですよ。
映画の中のそのシーンについて、宇多丸さんはこう話しています。(聞き書きなので正確じゃないです)

次は当時の新曲のフライングゲットを披露しますよってところで、その直前、舞台裏に帰ってきたあっちゃんはまた過呼吸になってる。はぁはぁはぁっつってもうぶっ倒れてる。意識もあるのかないのかみたいな感じですよ。
で、もうフラッフラになりながら衣装つけて、ギリでステージに立つ。で、フライングゲットに関しては、ここで(映画前半の)総選挙のシーンが伏線にもなっていて、つまりこのフライングゲットって曲は、あそこまで辛い思いをして再びセンターをとった曲なわけですよ。だから辛いからとかいって出ないわけにはいかないわけですよ! っていうさ。
で、さあステージにフラフラになりながら出ました、こっからの映像、神です。(略)前田敦子さんは(ステージに)出たけどしゃべれない。そのしゃべれない様子をちょっと笑いっぽくフォローしつつ、たかみなさんがフッと横によってって、落ち着けって、深呼吸させて、おじぎもフッと(手を)背中にあててさせて、カバーするという、たかみなすげえ、たかみなすげえ、たかみなすげえ! って、で、曲がはじまって、もうはじまっちゃうわけですよ、始まったら歌わなきゃいけない、踊らなきゃいけない、もうはっきりいって前田敦子さんのそこまでの様子からいってもう無理だろどう考えても! って感じなわけですよ。
で、さあ歌がはじまりました、いったん中に沈んでパッと立ち上がったあっちゃんが、笑顔ーーーー!って!(笑)

さらにアンコールになるとさらに死屍累々ですよ。あっちゃんだけでなくカバーする周りもどんどん倒れてくわけです。(略)
ここで映る客席のアンコール声が、暴力的にすら聞こえる。もちろんアンコールを唱えてるファンが悪い訳じゃないけど、この映画は、アイドルのファンであるということは、それ自体が彼女たちに負荷をかけるというこの構造に加担しているんだぞということを伝えてるわけです。

で、私はここで話題にあがってる西武ドーム2日目のライブを見に行ってたんですよね。
前田敦子が途中でいなくなったのには気づいていて、熱中症で今ちょっと休んでるってアナウンスも確かあって、ちょっと心配しながら待ってて、でもフライングゲットで踊ってるのを見て、ああ大丈夫だった、よかった、って思ったんですよ。でもね、
ぜんぜん大丈夫じゃないじゃんかー!!
っていうのがこの映画の感想でした。本当に、画面を見ているだけで息苦しくなるような舞台裏だった。
でも同時に、表面的に「大丈夫」に見せきった彼女たちの力の大きさも感じました。寸前までうつろな目で肩で息をしながら氷嚢をあてられていたチームAキャプテンの高橋みなみが、時間稼ぎのためにステージ上に戻った瞬間、花道を全力疾走してみせる、あの姿にはしびれました。

私はずっと、好きな野球チームがいて、試合結果に一喜一憂し、たまに球場にいって応援して、ファインプレーに涙する、みたいなのにあこがれていました。
私にとってAKB48を好きな気持ちは、その「好きなスポーツチームがいる感覚」に近いんだと思います。
AKB48という競技があって、そこに幾つかのチーム(チームA、K、B、4)がある。チームひとつひとつに個性があり*1、ルールが分かってくると、有名選手はやはりそれなりの実力があるんだなということとか、常に安心感のあるプレーをする選手もいれば、普段は目立たないけれどチャンスが来れば試合の流れを変えてくれるような選手もいることがわかる。
そうやって1人ひとりが見えてくると、ついつい「この子こんなにいいパフォーマンスするのにもっと目立てないのかな」とか「このメンバーの活躍をもっと見たい!」などと、応援していきたい気持ちが芽生えてしまうわけです。
そして、AKB48は、そうやって「ファンに見つけさせる」ためのきっかけ作りがすごくうまいんだと思う。今回のドキュメンタリーだけでなく、総選挙や握手会などのイベントはもちろん、ほぼ全てのコンサートでメイキング映像が撮影されDVD特典として公開される。日々更新されるブログなども「舞台裏」を見せ続ける装置になっている。
もちろん、そこには何らかの思惑や仕組みは当然あるものだと思いますが、これだけ膨大な舞台裏と舞台上を晒し続けていると、そこには台本では絶対に追いつけないスピード感が生まれるわけです。そのリアルな感触もまた、スポーツを見てるときの感覚に近いんじゃないかなと思う。
宇多丸さん曰く「残酷ショー」であるところの総選挙についてとかね、いろいろ思うところもあるけれども、試合(公演、イベント、雑誌、テレビ番組、MVなど色々)を通して、応援してる選手のプレーに一喜一憂するみたいなのはやっぱり楽しい。AKB48は自分にとっては今のところ、そういうものです。

最後におすすめ

とはいえ、このドキュメンタリーのような壮絶さがAKB48の魅力なわけではなく、この壮絶さを努力、友情、チームワークで乗り越えてるように見えるこのスポ根漫画っぽさこそが魅力の最も大きな部分なんじゃないかなとも思う。
というわけで、最後に私がAKB48に感じている魅力を凝縮したものとして、AKB48というグループ内の立ち位置をヤンキードラマという形でパッケージしなおしたドラマ「マジすか学園」と、彼女たちがお互いを撮影しあった写真とコメントだけで構成されている「友撮」という写真集をおすすめしておきたいと思います。かわいいし楽しい。

AKB48 マジすか学園 DVD-BOX(5枚組)

AKB48 マジすか学園 DVD-BOX(5枚組)

AKB48 友撮 THE BLUE ALBUM (講談社 Mook)

AKB48 友撮 THE BLUE ALBUM (講談社 Mook)

AKB48 友撮 THE RED ALBUM (講談社 Mook)

AKB48 友撮 THE RED ALBUM (講談社 Mook)

*1:秋葉原の劇場公演ではチームごとに異なる演目の公演をしています