もらとりあむタマ子

監督:山下敦弘
年末に見ました。
苦役列車」に続く、前田敦子さんと山下敦弘監督のタッグ作。
苦役列車」での独特の佇まいも印象的でしたが、この「もらとりあむタマ子」は、アイドル前田敦子から女優前田敦子への過程に欠かせない作品になったのではないかなと思います。

主人公、タマ子は、就職浪人をして父親のいる実家へ帰ってもらとりあむ生活を送っています。わがままだし、だらしないし、人見知りだし、でもなんか憎めない。映画はそんな彼女の四季を描いたものになっていて、途中、タマ子の父親に対する図々しさにちょっと苦笑してしまったりもするのですが、地元で偶然出くわしたかつての同級生との距離感とか、所々共感できるところもあり、とても楽しかった。特に弟的な立場の中学生とのやりとりはすごく面白くって(「透明感」さいこうだった)、映画館も笑い声に包まれていました。こういう会話劇での山下監督はほんとテンポづくりがうまいなあって思う。
さらによかったのが食事の場面です。何が好きといってもわたしは人がおいしそうにご飯を食べている様子をみるのが好きで、その中でも特に、前田敦子さんの食べっぷりを見るのはとても好きなんです。
とはいえ前田さんの食べっぷりはかわいく食べる、というアイドルらしいそれとはちょっとちがいます。結構思いっきり頬張ります。さらにファンの間では、彼女はすごくよく食べることで知られていて、今はもうなくなってしまったのですがAKB時代にやっていたブログには時折彼女の実家での朝食写真がアップされ、その量が話題になっていたりもしました。(参考→http://akb48taimuzu.livedoor.biz/archives/2943520.html
この「もらとりあむタマ子」にも、彼女の食べているシーンがたくさんでてくるんですが、そのどれも、ほんとによく食べる人の食べ方でねえ。お行儀はよくないんだけど、もりもり食べている様子が、もしかしてもしかすると別の世界線での前田さんはこんな感じだったのかもなあとか思ってしまう自然な魅力がありました。
前田敦子さんというと、アイドルグループのセンターで、という華やかなイメージがあると思うのですが、グループの中でもどこか浮いているというか、つかみ所のない魅力のある人でもあったと思います。なんにでもなるし、でも彼女以外ではない、という、周囲との距離感は、あの少し震えているような声とあいまって、長く忘れられない余韻として残るような気がしています。