ずっと前、吉祥寺のジュンク堂で柴田元幸さんの選書フェアをやっていて、そこに並んでいたのを見て買った短編集。
川上弘美さんの文章はとても好きなのだけど、読みたいタイミングに読みたい作家さんの一人で、つまり長らく積んでいて、先日ようやくしっくりくるタイミングがあり、読み始めたのでした。
漫画にしても、小説にしても、私はどちらかといえば短編を好む傾向にあって、それは少し日記に似ているからなのかもしれないな、と思う。
人生や1日の断片をどのように切りとってどのような角度で見せるか、というその手さばきであるとか、切り取られた部分を想像できる余地であるとか、さらにその想像によって、それを読んだ自分の1日に混じり合う感じとか。
この本に収録されている短編も、様々な主人公の、多種多様な出来事を切り取ったお話ばかりで、お話し同士が(一部をのぞいて)つながっているわけではない。
けれど、私がこの本を読んだ数日は、このたくさんの窓をのぞいた時期として記憶されるし、それは私だけが抱くことのできる、感想なのだと思う。
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特に好きな話は「むかしむかし」。
「むかしむかし。あたしは、しあわせでした。」
この一文のことを何度も思い出すだろうなと思った。
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- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/11/13
- メディア: 文庫
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ドキドキもワクワクもそわそわもキラキラもなんか違うのでうきうき、なんだけどそれも何か違う。もっと漠然とした気分なんだけど、それはこの本を読んでる間の、ああ世界にはたくさんの人がいるな、と思う感覚に、ちょっと似ている。