さむい四月の雨の日雪まじり

昼過ぎから図書館にこもっていた。行く道の向こうに桜並木を見つけたので、帰りにちらっと花見でもしていこうと思っていたのに、地上へ戻ると外は大雨。傘はない、コンビニもない、何もない道を走りだしたとたんに、体が重くなるほどの雨。
だから、屋根を見つけて飛び込んだのは、ぬれるからではなく、単に息切れしたせいだった。すでにそこには同じく途方にくれている人が数人、肩をよせあっていて、彼らもまた、それぞれに濡れていた。グレーがネズミ色に、ブルーが紫に、私の春コートも、K100がリッチブラックになっている。立ち止まると急に寒い。首をつたう水滴に肩をすくめる。
そして私たちは、ざあざあ降る雨が急に太く流れ、ぼた雪になる瞬間を見た。しゃーっという車の音にまぎれて、誰かが「雪だ」と言い、頷いてしまったのは私だけじゃなかったような気がした。
そして再び走り出す。吐く息が白い。ぼた雪が顔や手に張り付いて痛いくらいだったけれど、どうにか駅までたどり着く。あたたかい。そして、急にびしょぬれな自分が恥ずかしくなり、恥ずかしさとは、多数との違いにあるのね、なんて思う。私の姿を見て、雨降ってるの? という会話をしてる人が数人いたけれど、こんどは頷かなかった。
雪はすぐに雨にもどり、それも夜にはやんだけれど、いつもは淀んでいる川が、ごうごうと流れ、大量の花びらを飲み込むのを見ると、もうおしまいなのかなぁ、と、思う。風邪ひきそうだ。