SFのイメージって、自分がSFと意識して読んだ作品によってかなり変わるような気がするのだけど、この短編集に収録されているSFは、どちらかというと自分が読んでいないタイプのものも多く、面白かったです。
「マルドゥック・スクランブル104」/冲方丁
最も面白く読んだのはやはり目当ての「マルドゥック・スクランブル104」でした。スクランブルもヴェロシティもそれぞれ3巻ある長編だけど、この短編はその世界観からぶれることなく、そのうえでこの1本だけで十分に面白く読めるものだったと思う。むしろあの長さに二の足を踏んでいる人はこれを先に読んでもいいんじゃないかなと思いました。
「俺の記憶力をテストしたいなら、あなたが八十歳になったときに今日のことを訊いてみてくれ」という台詞に続く言葉がとてもよかったです。ウフコックはいいこと言うな。
「アンジー・クレーマーにさよならを」/新城カズマ
元ネタになっているらしいボルヘスの「もうひとつの死」という作品は読んだことがないので、この作品を楽しみきれているかは自信がないのだけど、テーマのひとつである「ファッションとしての遺伝子書き換え」というエピソードは先日読んだ「ビューティフルピープル・パーフェクトワールド」に、いまのところ最もイメージが近いような気がする。これについてはまたこんど考えたい。
ところで、そういえば去年の今頃は「15×24」を読んでいたんでした。楽しかったな。
「地には豊穣」/長谷敏司
初めて読む作家さんですがとても面白かった。
人間の脳の情報をデータ化する技術が発達した世界のお話で、個人を成り立たせているものは何か、というとても好みの問題がテーマとなっている。「あなたのための物語」という作品にもこの技術が登場するらしいので、それも読んで見たい。