あまなつ/新井英樹

真説WIMとあわせてだったんでしょうか。長らく手に入らないでいた新井英樹さんの「あまなつ」が重版されて店頭に並んでいた。うれしいなぁ。

あまなつ―新井英樹作品集 (ビームコミックス)

あまなつ―新井英樹作品集 (ビームコミックス)

何が収録されているのか、知らなかったんだけど、モーニングに連載されていた中編「ひな」は読んだことあった。これは一人の女性に翻弄される男たちのお話。こういう魔性の女ものって結構読んだことあるような気がするけど、魔性の男性っていうのには出会ったことがないので(まあ女性でもいいわけですが)その気持ちはいまいちわからない。でも、この「ひな」という女性がなぜこういう愛され方をするのかってとこに何かがあるような気がして、そこを描いてないとこが新井英樹作品としては物足りないかな。
「牽牛庵だより」は新井作品としては意外な見開き2pの不条理(なのかな?)ギャグ漫画。主にパーティ増刊に連載されてたものだけど、モーニングっぽいなぁと思う。
「こどもができたよ」は、後の「宮本から君へ」と「愛しのアイリーン」につながるようなお話。全体的に軽いタッチで、ほかの作品に比べると作者のにおいを感じさせないけれど、見開きページやラストでもってく感じが、やっぱりうまい漫画家さんだなぁとしみじみ思います。

 わにとかげぎす/古谷実

わにとかげぎす(1) (ヤンマガKCスペシャル)

わにとかげぎす(1) (ヤンマガKCスペシャル)

人生を眠りたおすことで「人生において遭難してしまった」主人公が

だけど今では…孤独は罪だと思ってる…/ましてや困難から逃れるだけのそれは……(略)友達をください…

と願うところからお話がはじまる。でも案外簡単に友達(のようなもの)はできるし、古谷作品につきものの主人公には美人の彼女という構図もちゃんとあって、読んでいる間の重圧感は今のところあんまりない。「ヒミズ」で潜ったところから「シガテラ」、そしてこの「わにとかげぎす」で少しづつトーンが明るくなってきたようなイメージ。でもこの先どうなるかわかりません。
ところでこのタイトル、ずっと「わにとかげきす」だと思ってて、たぶん「スキトキメトキス」みたいなもんかと思ってたんだけど、ギスなんだな。どういう意味なんでしょうか。

 亡きミュージシャンの記念館

ハワイに、尾崎*の母親と妻が経営している記念館を兼ねたホテルがあり、そこへ取材に行く。夢の中では、尾崎*となっているけれど、私は彼についてほとんど何も知らないので、詳細はめちゃくちゃだ。
そのホテルは品の良い白壁の一軒家で、応接間に大きなスクリーンがあり、来訪者はまずそこで故人の映像を見せられる。彼の母親が解説をする。彼の妻である二頭身の(ドラえもんのような)アンドロイドが客にお茶を配ってくれる。コテージのようになった客室では、彼の映像(3D映像が空中に投射されるやつ、なんていうんだっけ?)がプライベートライブをふるまってくれるというのがこの施設の目玉だ。
私はその応接間にいる人々の中で唯一彼のファンではなく、だからこそ居心地の悪さを感じながら、もしも私の好きなミュージシャンの、例えばトム・ヨークにまつわるこのような施設があったとして、私は行きたいだろうか、と考える。行きたくない、と思う。そして「亡き夫人のヌード写真を客に見せることと同じくらい悪趣味だ」と私はメモ帳に記すのだけど、目覚めて思い返すと、その言葉の使い方はおかしい、と思う。