青の稲妻(任逍遥)

青の稲妻 [DVD]

青の稲妻 [DVD]

監督:ジャ・ジャンクー
少年でも青年でもない、2人の19歳が主人公。舞台は中国の地方都市。
いまどきの青年*1シャオジィはダンサーのチャオチャオに一目惚れして彼女を追い回している。その友人ビンビンには大学受験を控えた彼女がいる。2人とも無職なのだけど、特にそれを気にする素振りもなく、変わり映えのしない毎日を恋でうめようとしているかのように見える。
冒頭を含む数シーンでオペラを歌い続ける男がでてくるのだけど、2人は彼にあきれつつも、彼のように何かに熱くなりたいと願っているように見える。しかし2人の恋はなかなかうまく行かず、社会情勢は自分達を置き去りに日々変化していく。ニュースがテレビの画面を通じてしか知らされないことは、主人公と社会との距離を象徴してるんだと思う。
その置いて行かれる感じは、中国のような広大で人口も多い国だからこそ、より切実なのかもしれない。原題の「任逍遥」という言葉は「自分のやりたいことをやる」という意味だと映画の中でチャオチャオが語るシーンがあるのだけど、この映画の中に居る人は皆、手をかける場所すらない大きな壁の前に立ち尽くしているようだ。太刀打ちの出来ない現実に対しては、結局虚無感でしか対抗できないのだろうか。シャオジィの「俺は30歳までで充分」という台詞を聞いて、そんなことを思った。
いつかこの監督が彼らの30歳以降を描く事はあるのだろうか。あるといいなと思う。

それにしてもこの監督の映画は映像が凝ってるなと思う。変わってるとかではないけど、最初は見えなかったものが、長回しの中で映り込んできたりすることにちゃんと意味をもたせてる。例えばビンビンが最後に彼女と会うところの長回しは、最終的に冒頭のシーンと同じ場所に取り残されているということが最後にわかって、うまいなーと思った。あと、暗がりの中に滲んで見える色彩もいい。とても好みの映像なんだけど、洗練され過ぎていて題材が浮かないかなとかちょっと思う。

*1:たぶんそういう位置づけだと思う。アメリカかぶれな感じ。パルプ・フィクションに憧れている。