風のつよい日で


陽射しが強くて、まぶしくてあつくて、プリントアウトした地図をひたいにかざしながらあるいて、ベンチで時間調整して、のむカルピスウォーターはもうぬるくて、うんざりしそうになりながら、でも緑の濃いこの季節は好きだなと思う。
ブナ科コナラ属、プレートの文字や校庭のはしの水飲み場に立てかけられたモップ、頭上の教室から聞こえてくるピアノの音と合唱に、反応するこの気持ちは、きっと感動というものにちかい。おくれて聞こえる笑い声。
奥の奥の離れまでたどり着き、ふるびた階段を踏み締めるように5階まで、ぜいぜいいいながらのぼる。先生のちょっと裏返った声と、腕まくり。本に埋まった部屋、風にあおられた白いカーテンからのぞく緑色。ひんやりした廊下、振り返っても誰もいない、しんとしたまっすぐの向こうにともる赤いランプ。
ほんとうに、学校という空間には感傷をかきたてるものばかりあってまいる。