「ひばりの朝」「裸で外には出られない」/ヤマシタトモコ

ひばりの朝」1巻

ひばりの朝 1 (Feelコミックス)

ひばりの朝 1 (Feelコミックス)

「日波里」という名の中学2年生の女の子を取り巻く人々を描いた連作短編集。2話で落とした石がゆっくりと波紋を広げ、この1巻の最後に収録されている7話へとつながる展開にはぞくぞくした。
ヤマシタトモコさんの描く人々は、どの人もそれぞれ、角度によっていい人であったり嫌なやつであったりする、と思えるところがすごくいいと思う。ひとが頭の中で考えていることは身勝手なもので、というのを私は私の頭の中しか知らないから、もしかしたら自分だけが身勝手なのかもしれないと考えたこともあるけれど、でもきっと、という確かな手触りがあるところが物語の面白さでもあると思う。
身勝手であることは善でも悪でもない。外にでたときはじめて評価されるとしても、見る人見るタイミングによって受け取られ方は違うだろう。読みながら自分はどのキャラクターに似ているだろうかと考えるけれど、どのキャラクターにも似ているところがある気がするし、彼らが吐く毒に胸がすくような瞬間があるのも本当で、早く続きが読みたいなと思っている。

「裸で外には出られない」

裸で外には出られない (マーガレットコミックス)

裸で外には出られない (マーガレットコミックス)

コーラスからcocohanaにかけて連載されていた、ファッション話のエッセイコミックと、短編3本が収録された単行本。
エッセイの方は、いろんなウエディングの話や地方豪族の娘の話など妄想系が特に面白かったです。宅配便再配達はあるあるだった(ですよね?)。
短編は雑誌掲載時に読んで印象に残っていた、「美青年」が特によかったです。女性漫画家が容姿をテーマに描くときって、コンプレックスであった点を肯定されることを大団円に持ってきがちな気がするんですけども、この漫画にでてくる主人公はそれを目標にはしておらず、自分の視線を相手のそれと交差させることで、たぶん無意識である相手と対峙しようとする様子にどきどきしました。いろいろ想像する余地もあるお話で、くり返し思い出すと思う。

それにしてもヤマシタトモコさんの漫画は新刊でるたびにぐっとくるお話が多くてすごい。新しく始まったらしい新連載もとても楽しみです。