ロブスター

監督:ヨルゴス・ランティモス

結婚していなければ「動物」にされてしまう、という設定の管理社会を描いた物語。
映画は、妻の心変わりで離婚することになった主人公が「再教育施設」のようなホテルに送られ、そこで次の伴侶を探すことになるところからはじまる。入所から動物化までのタイムリミットは45日間。定期的に行われる「狩り」によってそのリミットを延長できるという仕組みだ。
伴侶を探す基準は、どうやら互いの「共通点」にあるようで、リミットが近づいたものは、時にはその共通点を偽って伴侶を獲得したりもする。

顔合わせの様子や、カップル成立からのお試し期間などは、まあ言ってみれば「動物園」の動物が番いをあてがわれるようなものなのだと思う。
途中に組み込まれる、1人でいればこんな危険がある、というような小芝居や性欲処理(処理してないけど)の描写が個々の感情抜きに行われている様子が見ていてしんどくなり、番うことができなければ動物になる、というのが皮肉にも思えてくるのだけれど、
映画では続いて「では番うことを禁じられたらどうなるか」という命題が提示される。そこで主人公は自分との間に「共通点」を持つ相手を見つけてしまう。どちらを向いても地獄である。

映画を見ていると、次第に与えられたルールに抗うことだけが、自分の「意志」を保つ方法のように思えてくる。けれど人間関係の間に生まれる感情というのは、そもそも意志で生まれるものではないはずだ。
そしてラストは抗ったはずの主人公が、まだ別のルールに従おうとしながら、これは自分の意志なのか? と自問しているような場面で終わる。

見ていると、それならば本能のままに生きることができる動物に転生するのも悪くないのでは…? とも思えてくるのだけど、それもまたこの映画のなかのルールに従っていることになるんですよね。袋小路だ…。

ちなみにタイトルの「ロブスター」は主人公が転生したい動物として挙げたもので、その理由にも何かこの映画のヒントがあるような気がして、観終わったあともいろいろと考えたくなる作品だったと思います。
自分は鳥とかがいいのでよろしくお願いします。