AIの書いた小説

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星新一賞」という文学賞に、2種類の小説創作ソフトが作成した小説が計4作品応募され、受賞には至らなかったものの一部は一次審査を通った、というニュースを知り、読んでみたいなあと思っていたところ、twitter経由でその応募作が読めるのを知り、「作家ですのよ」というソフトが作成した方の短編2作品を読んだ。

AIの書いた小説を読むという体験が出来るなんて、未来きてるな! という感じだ。
そしてこれが、なかなか面白かった(特に「コンピュータが小説を書く日」の方)。ところどころ不自然なところもあるような気がしたけれど、とはいえAIが書いた、ということを知って読んでしまっているので、それはわたしの先入観によるものなのかもしれない。

「作家ですのよ」は星新一さんの1000点以上の短編SFを解析して、小説を作ることを目指しているが、現段階ではまだデータは生かされていない。作りた い文章を名詞、形容詞、エピソードなどにばらしてそれぞれの要素のバリエーションを「部品」という形で用意し、「組み立て手順」に従ってAIが組み立て た。

ということなので、まだかなりヒトの関与する部分は大きいのだと思うのですが、星新一さんのデータが活かされるようになったらどうなるのか、また読める機会があったらいいなと思います。

上の2作品を読む前は、AIの書いた小説って、オチがなかったり展開が唐突だったりしそう…という漠然とした偏見をもっていました。でもとりあえずそんなことは全然なかった(とりあえず上の2作品については)。

例えば私が推理小説を読む時は、物語の展開に理由を期待してしまうし、その期待にちゃんと応えつつ、意外性や偶然必然共感反感、みたいなものを個性的に配分して仕上げ、なおかつ終盤に向けて高揚感を煽ってカタルシスを感じさせて欲しい……みたいな欲求がある。
そしてそれを書く、という作業は、展開されうるいくつもの可能性を、客観的にどう見えるか/どう期待されうるか、を複数パターン想定し続けながら、どこをどう見せるかスイッチングしていくことに似ているような気がして、
そのようにすべてを俯瞰で見続けるということはものすごく、負荷がかかることのように感じるし、人間の脳(とりわけ物語を書く才能がある人の)は、たぶんそこのところで何かを省きながら作業するのがうまいんだろうな、と思う。
しかし、それを機械がやるとなると、本当にすべてを並行に稼働し続けてしまいそうで、長編を書くのは難しいんじゃないか……とも思う。
……というのは私のAIに対する見くびりなのかもしれませんが、
ただ、そのような「出てきた文字列に読者が何を期待するか」っていう反応はパターン化できそうな気もするし、そういう反応を蓄積していけば、「特定の条件を入力した上で小説を出力してくれるサービス」という所に特化したソフトというのは近い未来にできるんじゃないかという気もしました。twitterで何人か書かれてる方を見ましたが、オーダーメイドの官能小説とかは特に向いてるような気がします。

最近、ずっと読んでみたかった「言語表現法講義」という本をちょっとずつ読んでいるのですが、その中に

文は書かれるだけではいけない。読まれなければならない。(略)読まれてはじめて、なぜ書くのか、という問題がでてくる。p11

と言う言葉がありました。
となると、AIの強みは、「なぜ書くのか」というところを自問しなくていいところかもしれないなとも思います。
例えば、上に挙げた2作品はどちらも主人公がAIの話でしたが、そのことによって読む側にあたえられる感慨、みたいなものを、仮にAIが想定したとしても、そこに期待はしない。でもヒトが書くとしたら何かしらを期待するんだろうなと思うしそれが書く動機にもなる。
その差異は文章にどのような違いをもたらすのかということにも興味があります。

小説に限らず、文章生成ソフトみたいなものの精度があがっていったら、このような文章に「AIをdisってるんですか?」みたいな反論がAIからきたりする未来もあるのかなー?と思います。
でもそうなったらネットにあげる文章もAIに読まれることを意識したりするようになるのだろうし、その時点でヒトの方が文章生成に伴う負荷は大きそうですよね。面白いです。