CROSS†CHANNEL

ついさっき、おわった。
今だから、というのもあるんだろうか。わからない。でもあると思う。なんというか、出来上がりかけてた琴線のようなものに、触れる、というのじゃなく、染む込むようにして、色が変わってしまったと思った。
何を大げさな、と思うかもしれないし、そう皮肉る自分もいるんだけれども、ちくしょう、参ったな、というのが、正直な感想です。だって動揺してるし。近年稀にみるくらいに。
やりはじめた当初は、クリア後に何か感想めいたことを書いてみようと当たり前のように思っていたのだけど、これは難しい。でも何か書こうとしてるのは、これが私にとって必要だってことなんだと、思います。誰かに報告したい。
まずは、これをおすすめしてくれたid:michiakiさんに心から感謝。

クロスチャンネル ~To all people~<2800コレクション>

クロスチャンネル ~To all people~<2800コレクション>

このゲームは、何ていうんだろうな。ギャルゲー、っていうんでしょうか。(注*1)はじめはどの子を落とすかとかそういうのだと思ってたんだけど、違った。構成としては、例えばひぐらしがひとつの物語であったように、これもゲームというよりは、ひとつの物語を読むような進め方でした。
ゲームの中で、ある日々を過ごして、少しずつ角度を変えてくことで、印象や見えることがかわって、交わされるやりとりが、積み重なっていく。そのこと自体に核となる意味があり、些細なひっかかりが像を結んでいくという構成はすばらしかった。時には太一の米笑がツボに入ったりもした。
大きくわけて、3つの章(4つ、かな?)にわかれているんだけど、特に二つ目の章では会話のひとつひとつに、驚かされた。個人的なキャラクターに対する好悪とかが、あまりにもタイミング良く主人公の台詞として反映されたりするので、脳内を読まれてるんじゃないかとすら思った。そして、このシナリオを書いた人がいるんだよなってことに、感動する。そして、これをやった人が、たくさんいるんだよなぁっていうのが、また。
【以下、ネタばれもあるので畳みます】

私がこのゲームに動揺したわけの一つは、あの場所にある。今でもまだ少し、あそこで、一人で、歩いてるような気がする。これは以前「死ぬのは怖い?」(id:ichinics:20060123:p2)という文を書いたときに思い描いてた「恐怖」に似てる。
終わらないということ。終わり続けるということ。終われないということ。しかも一人で。
私があそこに残されたら、どうなっちゃうんだろうと思う。
でも、こんな気分になるのは久しぶりだった。自分の頼りなさとか、逃げ場のなさとか、思い知れるのは、いい。いや、別に全能感を持ってるわけではないのだけど(たぶんね/だって全能ってなんだ?)、思い知ることで改めて気付けることもある。
以前読んだ「「私」のための現代思想」という本で、納得できなかった部分(id:ichinics:20060710:p1)

そのなかで私たちは孤独な闘いを続けつつ、同じように孤独に闘っている〈他者〉の声を受け取ることができます。(略)そうすることで私たちは〈他者〉にその存在を引き受けてもらい、それによって、《私》という存在が確実なものとなり、また、その存在の強度を増していきます。

というこの箇所は、このゲームの主人公、黒須太一の言葉ととてもよく似ている。そして、含む意味が違うとしても、太一の文法の中でなら、ちょっと、納得できるような気がした。〈自分〉という物語に執着したい理由も、なんとなく。
あの町で、歩いてるところを想像する。やっぱり恐い。そして、誰かに、話しかけたいと思う。

なんかしんみりしてしまったので、最後に気軽なことを書いてみる。一番ぐっときたのは続いてる美希のシナリオでした。この日にやってたのもそこ。最後までやり終えて、一番好きなキャラクターになった。自転車少女は、最終的に意外な展開だったけど、声が好きだ。桜庭もよかったな。シンプルすぎて、ちくしょう泣かせんなよ、って感じだ。あと、このゲームをやり終えて、最初に聴いた曲は、The Afghan Whigsのこの(asin:B00000DFRU)アルバムに収録されてた「Crazy」でした。なんかあう。
ともかく世の中にこんなすごいものがあったなんて。やれてよかった。やり終えて、さびしい、ってのとは違うけど、またやろうと思いました。やろうかな、と思う人はやった方がいいと思う。

感想続き(http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20061106/p2

*1:実は、これが届く前に、PCの体験版をダウンロードしてちょっとやりました。で、プレステ版とPC版はもしかしてちょっと違うのね、ということがわかった。エーロー方面で。そこんところ、PS版では若干の不自然さがあるのですが、そこは脳内モザイクで処理できる程度でした。ストーリーに違いはあるんでしょうか?