鳥取旅行その6/植田正治写真美術館


そして鳥取旅行のお目当てその3は、植田正治写真美術館に行くことでした。
前日の夜、携帯の時刻表で調べてみると、米子から美術館のある岸本駅までの電車は、2、3時間に1本くらいしかないらしく、ならば朝いちでと8時台の電車にのって向かう。車内にはバッタも乗ってたりして、なかなかにのどか。そして着いた駅はさらにのどか。駅からの眺めは緑!
駅を出でも案内らしきものは特になかったので、すぐそばにあった車庫にとまってたタクシーにのせてもらおうと事務所を訪ねる。すると、畳の部屋で寝ていた運転手さんが起きてきて、車をだしてくれた。
暑いけど大丈夫か、松江にはいったか、美術館は建物がきれいなのでぐるりとまわるといい。など、いろいろ話してくれる。後から、方言がさっぱりわからなかった、なんで相づちうてるの? と連れが不思議そうにしていたが、不思議と耳に馴染んだのは、祖父祖母の言葉のせいか、鳥取に来て3日めだからか、よくわからなかった。なんとなくの会話。車ではほんの数分の道だけれど、やはり歩けば一時間はかかるだろう。帰りにもきてもらおうと思い、電話番号をもらってからおりる。
そして入館。
事前に展覧会情報を調べていかなかったせいもあるのだけど、その日やっていた展示が植田正治さんの作品中心の展示ではなく、植田さんと縁の深い(ということもよく知らなかった)、福山雅治さんの特集だったのには、ちょっとがっかりしてしまった。福山さんのことはあまり知らないし、植田さんの写真を鳥取で見る、ってことにわりと意気込んでいたので、3つの展示室のうち2つも(うち1つは福山さんが写される側である複数の写真家の展示だった)私にとってはあまり興味のないものであるというのは、なんだかちょっとかなしかった。
ただ、福山さんが植田さんのファンだというのは聞いたことがあったけど、植田さんの弟子入(?)りした写真家でもある、というのは知らなかったので、新鮮な気持ちもありました。それに、福山雅治さんの作品にも、いくつか、惹かれたものがあって、特に植田正治さんをうつした写真など、その関係性が伝わってくるようで印象にのこった。ただ、ヨーロッパ(?)で撮影された作品が並んでいたあたりで、そのモチーフの選びかたや、視線の感覚というのが、どうも私の好みではなく、それはどこか、私が植田さんの写真に感じていることと、他の人が植田さんの写真に感じることが違うのだなということを思い出させてくれた。

うーん、なんて落ち込んでいたのですが、最後の植田さんの写真展示室にあった、植田正治さんの娘さんである植田カコさんの作文を読んで、そのちょっとつまらない気持ちはすっかりなくなった。

「サァ行こう」とパパがせんとうになって、しゅっぱつしました。
とちゅうであう人が、みんな同じように「今日は何ごとですかね」とおっしゃいます。そのたびにパパは「これです。これです。」といって、ローライしゃしんきをふりまわしてみせています。
(略)
早くうつせばいいのになあ、とおもいますが、パパが聲をかけません。トッちんが、じっとしていないので、パパはやがて、いつものコグマとキツネのおはなしを、はなしだしましたので、みんなが、笑いだしてしまいました。
(略)
それから二三日だって、学校からかえってみると、もうあの時のしゃしんが出来ていました。
私はまぶしそうなかおをして、立っていますので、はづかしいとおもいましたが、もう、しかたがありません。
パパとママは、「おもしろい」「おもしろい」とはなしていますので、私もそうかなあとおもいました。

これは、あの印象的な家族写真「パパとママとコドモたち」(一番上にのせた写真)の撮影について書かれたものだ。この作文を読んでから、ふたたび写真を見てみると、まるでその中の人々がいまにも笑いだしそうに思える。そして、このカコさんの言葉の中からも、植田さんが写真をとることをとても楽しまれていたことが伝わってきて、それはとてもしあわせな、写真なんだなと思った。
 美術館のある駅
 美術館外壁
 後ろを向くとこんな
 米子駅から乗り込んできたバッタ
 そして花回廊へむかいました!