風呂上りの夜空に/小林じんこ

先日、好きな漫画の話をしていたときに、友達が一番好きな漫画のうちのひとつ、って言っていた作品で、そのまんま全巻貸していただいて読みました。大感謝!

風呂上がりの夜空に (1) オンデマンド版 [コミック] (ヤンマガKCスペシャル)

風呂上がりの夜空に (1) オンデマンド版 [コミック] (ヤンマガKCスペシャル)

ヤングマガジンで1984年から1987年まで連載されていた作品とのことですが、ファッションなどは少しなつかしいものの、あまり古さは感じない。教えてもらうまで、私はこの作品のタイトルも、作者の小林じんこさんについてもまったく知らなかったのだけど、いっぺん読み始めたら、あーこれすごく大事な漫画だな、と思ってしまった。そして読み終えるのがもったいなくなった。
物語は某高等学校を舞台に描かれる、主人公辰吉と、同級生で、彼に思いを寄せる銭湯の看板娘もえのラブストーリー。たぶん。ラブコメかもしれない。青春ものでもあるし、不条理だったりSFだったり、群像劇でもあると思う。とにかく奔放な漫画なのが魅力なのだけど、それでいてお話がぶれないのは、主軸がきちんとあるからだと思う。
中学生の頃に、辰吉はもえをかばっておしりに傷を負うのだけど、もえはそのことがずっと忘れられず、辰吉に再会した後は彼に思いを寄せるようになる。これだけがずっとぶれない主軸であって、あとはほんと説明的な部分もなく、某高校と町の人々の生活が描かれている。
毎日いろいろある。でもその中で、ゆっくりともえは自分の気持ちを確認していき、辰吉もまた、少しずつ歩み寄っていく、その感じがすごくよかった。

「辰吉くんといると自分が自分でいられるって きっと自分が一番好きな自分でいられる状態だったってことなんだよね」
「その「こと」に酔ってたみたい私……」
「そういう状態にしていてくれてる「辰吉くん」ていう人間に感謝するどころか 辰吉くんを鏡に……反射板にしてはねかえってくる姿に 一番好きな自分の姿に 今まで酔ってたような気がするんだわ……」
49話

この漫画(というかもえの)テーマにもなってる「君が僕を知ってる」という曲があって、うん、好きな人ってそういう存在だよなって思った。だから上の台詞の後のもえの解決のしかたもよかったな。

だから"夢”は絶対かなうものでさ
かなった時に みんなその思いが純粋だったことに
きっと 気づくんだろうなぁ なんて
60話

読み終わってしまってさびしい。けど、読めてよかったなと思います。