「三文未来の家庭訪問」/庄司創

三文未来の家庭訪問 (アフタヌーンKC)

三文未来の家庭訪問 (アフタヌーンKC)

とっても面白かった。庄司創さんの作品を読むのはこれが初めてなのですが、新しくすべての作品を追いかけたい漫画家さんに出会った気がしてとても嬉しいです。
この本には3本の作品が収録されているのですが、どれも短期連載くらいの分量があるので中編集という印象です。どれも私の大好きな近未来SFで、でもSF設定を描くのではなく物語に必要なものとしてその場所が描かれている感じがする。
特に気に入ったのは表題作でもある「三文未来の家庭訪問」。様々な主義主張の集団生活団体がある近未来、そのうちの1つである遺伝子改造をした人々の団体「WOLVS」で育った“女性と結婚すれば子どもを生むことができる男の子”が、普通の小学校に入学して…というお話。彼は小学校で、別のある団体「彼方」に所属する親のもとに育った“ルール違反を見逃せない女の子”と出会う。
こうやって説明するとややこしいんだけど、読んでいると難しいところはまったくないのがすごい。「団体」は宗教のようでもあるけれど、どちらかというと育ってきた環境や意見の違いというものをわかりやすく描くための装置なのだと思います。
2人が仲良くなっていく過程を通して、一見すると「団体」というものに支配されているようで、じつは折り合うところを探り合うことができる、人々の可能性のようなものがしっかりと描かれているのがいいなあと思いました。
つづく「パンサラッサ連れ行く」もテーマは近いお話のように思います。
どのお話も、でてくる登場人物がみんな好ましく、読んでいてとても気持ちが良かった。これからの活躍がとっても楽しみです!