ひかりのまち(wonderland)

ひかりのまち [DVD]

ひかりのまち [DVD]

マイケル・ウィンターボトム監督
胸がいっぱいになる映画。友達が「一番好きな映画」と言っていたので、もう一度見てみようかなと思って借りてきたんだけど、前に見た時よりも登場人物たちと年代が近くなっているせいか、より胸にせまるものがあった。
物語には一つの家族のある週末の出来事が描かれている。自分に自信がないように見えるカフェ店員のナディア、シングルマザーとして小学生の子どもを育てながらも自由奔放に生きるデビー、そして出産を間近に控えて夫と喧嘩してしまうモリー。定年退職後、日々を無気力に過ごす父親ビルと、ノイローゼ気味の母アイリーン、そして家出してしまった弟ダレン。そしてそのまわりの人々。全ての登場人物がなんらかの悩みや葛藤を抱えていて、その全てが私自身にも覚えのあるもののように感じる。
特に説明的なシーンなどないのに、登場人物たちの心の動き、言葉にできないほんとの気持ちが手に取るように伝わってきて、何気なく流れて行くシーンの全てに意味、というか人生がある。そして、なんだか、このまちのどこかに、自分もいるような気がする。
世界中で、ひとりきりの気分になって歩く「自分のいない」街は、ひかりに溢れた美しいもののようにも見えるけれど、よく目を凝らせば、たくさんの人が、例えば深夜のバスで1人涙を流すナディアのように、救われることを求めている。
そんなすべての人を、ひかりが繋いでいたりするんだなぁ、とか、感傷的なことを考えてしまう、そんな映画でした。視線がやさしい。
すれ違いを見続けていると、どんどん切なくなってきて、もう皆本音言ってしまえばいいじゃんか、と思うところもあるのだけど、現実はきっとこんな風だ。あーあ、そのタイミングで言わなければいいのに、なんてことばっかりなんだけど、でも、意外とちゃんと伝わってたりすることもあったり。
とてもいい映画です。題名は原題の「wonderland」のがいいと思うけど、ひかりのまち、という言葉も、映画の意図するものをきちんと代弁しているように感じる。
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アイリーンがビンゴ(宝くじ?)をやっているシーンで、ふとレイモンド・カーヴァーに似たようなシーンの短編があったことを思いだしたのであとで調べる。