- 作者: 藤原カムイ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1999/04
- メディア: コミック
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連載までには紆余曲折あったようだけど、もともと藤原カムイさん自身からの発案で「インタラクティブ」ということを目指されていただけあって、その世界観の奥行きはすばらしい。また、あとがきなどを読むと、読者の参加を促す言葉があちこちに見られて、なんというか、連載時に知りたかったなぁという気持ちがかなりあります。
とまあ、その辺りの残念さをおいておいても、私はこの漫画が大好きです。私の好きな「舞台設定」の完全体のうちの一つだと思う。藤原さんはほんと絵がうまくて、どのコマをみてもときめく。とくに町のイラストはやはり圧巻。かなり詳細に設定を考えたうえで書かれてたんだろうなと思うし、その設定を共有することができた住人さんにうらやましさも感じてしまいます。
福神町は大正3年、東京大正博の会場がそのまま異世界に飛ばされたという設定で、蒸気とぜんまいで町自体が動いていて、複合住宅で、ところどころSF。逆柱いみりさんやつげさんぽいとこもありながら、全体的に明るさがあるところが独特。そしてそれは、「電気」がないという設定による効果だと思う。反対みたいだけど。
物語はときどき番外編を含む連作短編ぽい趣なのだけど、インタラクティブで読者参加型という片鱗はしっかりあるものの物語が破たんしていないのがまたすごい。つまり、これが「インタラクティブ」であったということを、まったく知らなくても、充分楽しめる漫画だ、と思います。
読者参加形、といってパッと思い付くのが京極夏彦さんの「ルー=ガルー」で、あれも読者からアイディアを募集していたような気がするけど、あんまりその「アイディア募集」が生かされていなかったような気がする。
しかし福神町奇譚を読んでると、参加してた人はきっと楽しかったんだろうなぁと思うし、実際にその「参加型」は成功してもいたんじゃないかと思う。参加していた方の文章などをちらほら見ると、まあやはりいろいろ意見はあったみたいだけど…。ネット利用者も格段に増えた今では、なかなかこういう親密さを生み出すのは難しそうだな。どうだろう?
でも、漫画読んでて、あーここ行ってみたいなぁってのが、擬似的にでも可能になるんだもんなぁ。いいなぁ。
福神町のマスコットガール(?)茄子ガールを見ると、黒田硫黄さんの「茄子」を思うけど黒田さんももしかして福神町読んでたんだろうか。わー。
この舞台設定でアニメ作ってくれないかなぁ。