八月の路上に捨てる/伊藤たかみ

八月の路上に捨てる

八月の路上に捨てる

いい具合にそれを忘れた頃に読みはじめたのだけど、読みながら、なんだか角田光代さんに似てるなぁなんて思ってて、ああそうかって、思い出してしまった。なんでだろう。空気が似ているんだろうか。どことなく、現実味があるようでないような。
芥川賞受賞作でもある「八月の路上に捨てる」は離婚届を出そうとしている男の一日を描いたもので、仕事仲間との会話から、結婚生活が破たんにいたるまでを振り返るような構成になっている。聞き手は今日退職する女性なのだけど、今ひとつ、どちらの人生にも光があたっていないというか、彼らが本当は何を考えていたのかとか、読めない小説だった。
併せて収録されている「貝からみる風景」も、スーパーの「お客さまの声」コーナーの1つが気になっている、という設定自体は面白いのだけど、いろんな要素がどことなくちぐはぐな印象。ラストでその投書の主について語り合う場面も、もっと具体的に読みたかったし、「妙に現実味があった」ってのがどんな描写なのか、そこを描かないのなら、物語の中心に何があったのか、もやもやしてしまう。