イカとクジラ

監督:ノア・バームバック
監督はウェス・アンダーソン作品に共同脚本で参加(「ライフ・アクアティックなど)していた人で、今回はウェスさんが製作で参加しています。それと、元LUNAのディーンが音楽で参加しているというのを聞いて、これは見にいかなきゃと楽しみにしていました。
すごくよかったです。特に奥行きのある人物の描き方が好きだ。だめな感じでも、魅力があるというか、人って面白いなと思わせてくれる。そして、彼らの行動と物語がしっくりとなじんでいるからこそ、じっくりしみる映画だった。
物語は80年代のブルックリンに暮らすある家族を描いたもので、両親が離婚を決意するところからはじまります。うんちくをたれてばかりの父親も、浮気を繰り返す母親も、それぞれ子供っぽく見えるのだけど、親になったからといって自分の人生を捨てられないという言い分もわかるような気がするし、振り回される子供たちの戸惑いもすごくリアルに伝わってくる。
依怙地になってしまうときのあの感じ。「依怙地にならないで」と言われるタイミングはいつも遅くって、そもそも欲しいのはそんな言葉じゃないのに、というひんやりする気持ちを自分の中から掘り返されるようだった。
この映画では何度も何度も「わかんない」って答える場面が繰り返される。息子たちだけでなく、親も「さあ」とか「わかんない」とか答える。たぶん考えるよりも前に動いているから、後でどうしてとかなんでそうしたのかとか問われても、わかんないんだと思うけど、それは何も感じていないこととは違う。ただ、理由もなく、近くにいたいと思うのが家族だったらいいのにね、と思った。
それからこの映画では、性的なことに初めて触れるときの男の子の描写も、新鮮に感じた。その辺男性の意見聞いてみたいです。親が親である以前に男女であるっていうことを知らされるときの、ちょっと待ってよ参ったなーっていうの、女の子の視点だとどうしても「汚い!」とかそういう反発として描かれることが多いように思うのだけど、どうでしょう。