エイリアン9/富沢ひとし

おもしろかった!これもまたついった経由で噂をきいて読んでみたんですが、ああまだ知らないものたくさんあるなぁってうれしい読書でした。

エイリアン9 コンプリート (チャンピオンREDコミックス)

エイリアン9 コンプリート (チャンピオンREDコミックス)

物語は、ある学園を舞台に、主人公が「エイリアン対策係」に任命されるところからはじまる。エイリアン対策係は6年生の女の子3人。ボウグという共生型エイリアンとともに、他のエイリアンをラクロスのようなネットで捕まえるのがお仕事。
エイリアンてなに? なんでエイリアンがいるの? 地球はどうなってるの? という疑問がじりじりと明かされていく抑制された展開はページをめくる手をはやらせるし、読者が想像できる余地の割合も絶妙。そして、主人公の「恐怖」を軸にすることで周囲の人物に関する説明を必要最低限度に保ち、物語の勢いをつけている。
そしてこの「かわいらしい」絵柄も重要な演出のひとつだと思った。今でいえば西島大介さんに通じるような、現実味のないかわいさと残酷さのギャップ。でも西島大介さんの作品が常になにかの暗喩めいた雰囲気をまとっている(ので私にはいつもよくわからない部分が残る)のにたいして、この「エイリアン9」で描かれる「かわいさ」は物語と有機的に絡みあう。だからちゃんとこわい。
リアルってなに、ってことはひとまずさておき、リアルな映像で見せるリアルな物語と、デフォルメされた映像で見せられるリアルな物語では、その演出効果のベクトルが違う。そして、この「エイリアン9」はそのギャップを利用して、自分ってなんだろう、という疑問を発したときの、ぞっとするような心もとなさ。を描いているんだと思う。
面白かった。筋は全く違うんだけど、なんとなくダン・シモンズの短編集に入ってた「最後のクラス写真」を思い出したりした。アニメ版もみたいです。