なつかしいひとの名前に出くわした。意志のつよい人だった、と思う。だからきっともうあえないんだろうな、とか、これはあきらめなのか私があっさりしてるのか、たぶんどちらでもないんだけど、漠然とそう感じていて、でも私とおなじように覚えているひとがいるんだなって確認できたのは、すごくうれしかった。
もし会えたら殴るかもしれないので、殴らなくてもいいように、遠くまで行ってくださいと思う。でも、困ったときは、連絡してほしいな、なんて、矛盾したことを思いながら、窓の下の横断歩道を眺める。
私はシネアミューズの隣の喫茶店が好きで、それは映画館に喫茶店が併設されているというそのことが好きなのだけど、とにかくアミューズにいくときはほぼ確実にあそこでお茶を飲む。そしていつだったか、あの眼下の横断歩道を、スキップしてあるく人を見た。
遠くにいるひとはみんな、まざりあってひとつの印象になって、誰のことを考えているのかわからなくなる。そのままでいいから、このぼんやりとしたあたたかさを、ちゃんと覚えてたい。
負ける自信があるので人を殴ったことなんてないけど、妄想するのはちょっと楽しくて、土手に寝転んで友情が芽生えたり、したかった。いつか。