魔法、その後「魔法にかけられて」

監督:ケヴィン・リマ
「いつか白馬に乗った王子様があらわれて、真実のキスをして、2人は永遠に幸せに暮らしましたとさ」というおとぎ話の世界と現実とのコントラストを、アニメ/実写を行き来する設定で描いたディズニーの、ディズニーによるパロディ作品。
容赦なく自虐ネタを繰り広げながら、しかし無理矢理にでもディズニーワールドに巻き込んで一本背負いみたいな映画だった。すごい力技。現実での「動物さん」たちとのお掃除シーン(ゴキブリまででてきてお掃除を手伝うところは秀逸だった)、おぼっちゃんだけど憎めない王子(姫探し忘れてテレビに釘付け)、往年のディズニープリンセスへのオマージュすらリアルの前ではただの変なひとになってしまう様子を曝しながら(金魚吐き出すアリエルとか)、しかしラストは多幸感でねじ伏せて終わる様が圧巻。
大笑いできて、とても楽しかった。でもどこかに、ごめんなさい…こういうとき、どんな顔をすればいいのかわからないの…っていう、もやもやした気持ちがあったんだけど、
見終わった後、背後の席に座っていた女子高生4人組が「よかったねー」「わたしこの映画好き!」「わたしも!」「しあわせな気分になる映画っていいよねー」って言いあいながらほんとに、ほんとうに楽しそうに帰っていくのを見て、ああそうか、そうだよなあと思った。
たぶん、17歳の頃は、わたしももっと軽やかに「いつかぜんぶうまくいく」っていう期待を(それはもちろん恋愛に限らず)持っていたはずだ。でもそれを持ち続けることは、いつのまにかすごく、力のいることになってしまってた。それは、うまくいったってそれでおしまいにはならないんだよということを、知ってしまったからだろうし、でも、だからといって「うまくいかない」わけじゃない。だから期待も捨て切れない。そのままならなさにはまってしまってるからだ。
「俺たち終わっちゃったのかな?」と問われれば、「ばかやろう、まだ始まってもいねーよ」 って、言い返したい気持ちだってあるのに、でも、もしかしたらずっと…、とかも思う。
それは、男の子にとっての『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』(id:ichinics:20080201:p2)みたいなものかもしれない。「最高のエンディング」をエンディング後を思い描きながら願う彼のように、その矛盾に気づかないまま、「いつか」はいつかくるようなきがしてた。その気分をちょっとだけ思いだして、切なくなった。
そんでも、「…と、いうわけで永遠に幸せに暮らしましたとさ、ちゃんちゃん!」てエンディングにポカーンとしつつ、見えるものがかわんないなら、見方をかえるのもいいかもなーとか、つい思ってしまうような迫力がこの映画にはあった。
それより、ラブコメ映画見てこんなどんよりしたこと考えてしまう自分にどんよりするよ! 助けてルサンチマン