ハピネス/古屋兎丸

IKKIに掲載された短編集。
古屋兎丸さんの作品は無機質なイメージがあって、というのを前にも書いたことがあるけれど、実はそのイメージのせいで長いことあんまり好みの漫画家さんではなかった。でも「ライチ☆光クラブ」(id:ichinics:20060821:p1)と「少年少女漂流記」(id:ichinics:20070225:p1)でちょっとイメージがかわったせいか、この「ハピネス」も、IKKI掲載時に読んだことあるのがほとんどだけど、今はなんか素直に読めた。
ここに出てくる人たちのほとんどは、現実でうまく振舞えない、現実と妄想がごっちゃになっている人なのだけど、彼らを描く視線が、外側ではなく傍らにある感じがする。そして、それを嫌みに感じないのは愛があるからなんだろうと思った。「愛」なんて言葉で丸めるのは嫌らしいけど、読者がいつかの(もしくは今の)自分にもある痛さみたいなものを重ねようとするときに、その愛があるかないかじゃ身の任せ方がかわってくる。
この作品集あっての「少年少女漂流記」だったんだなと思うと、今後も楽しみです。この「ハピネス」の装丁は乙一の「失はれた物語」に似てるんだけど、同じ人がやってるのだろうか…。

ハピネス (IKKI COMICS)

ハピネス (IKKI COMICS)

ところで「ハピネス」は「リリィシュシュ」に、「雲のへや」は「害虫」に、とてもよく似た情景が出てきた気がするんだけど、どちらも見たのはずいぶん前なので私の思い込みかもしれない。それから第一話「嬲られ踏まれそして咲くのは激情の花」は映画でみたいなとおもった。