- アーティスト: ZAZEN BOYS
- 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
- 発売日: 2008/09/17
- メディア: CD
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そして、その気分はあの、2005年の SUMMER SONIC でのライブ*3で確信に変わった。あのライブは、会場の問題で状況的にはほとんど最悪といってもよいものだったにも関わらず、彼らの演奏は最高にすばらしかった*4。「全部のパートが主役として拮抗し、形を変えながら上り詰めていく感じだった」と、その時書いた感想そのままが、私にとってZAZEN BOYS の魅力だった。
その後はもう夢中でライブに通った。ZAZEN BOYS のライブは、常に1度きりのものだった。ライブを重ねる毎に、曲が生まれ変わっていくようで、特に小さい会場であるほどにその感触は強まった。それはたぶん大きい場所でと小さい場所でのやり方を、変えているのだと思う。お客さんがひとつになるとか、そういう楽しさとはまた違って、とにかくバンドという塊にのまれる、圧倒されることがこんなにも楽しいなんて初めて知った。
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だからこそ、私はこの4枚目のアルバムに、というか4枚目に収録されているいくつかの曲がライブで演奏されるようになって、正直戸惑ってしまったんだと思う。
ステージにいつもキーボードが出るようになったのは、たしか、駒沢大学のライブ付近だった。そんで、2006年4月のAX*5ではそれでヴァン・ヘイレンちょっとやったりもしてたのが懐かしい。そして3枚目がでて、ベースが吉田さんに変わった*6。やがて、新曲として披露される曲にはちょっとハウスっぽい音色が増えて*7中にはカシオメンまでギターを持たない曲があった。
ヤンキーが身体的な演奏だとしたら、吉田さんの硬質な演奏は対極にあるように思えたし、バンドの向いている方向も、徐々に変わってきている気がしてた。しかしやはり ZAZEN BOYS というのは向井さんのバンドだし、ZAZEN BOYS という特別性能の良いバンドを生かすのが向井さんだとも思っていたので、むしろこれからに期待する気持ちのほうが強かった。
でもその期待の仕方は、やはり自分にとって最初の衝撃だった「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」を向いていたんだと思う。
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じゃあ結局4枚目どうなの? ということについて、アルバムが出てからしばらく考えてたんだけど、やっぱり、これはすごくかっこいいアルバムだと思う。
ここまでなんか後ろ向きなこと書いててなんだよという感じなんだけど、例えばこれがザゼンのアルバムでなければ私はやはり、最初からものすごく興奮して日記を書いただろう。一番に気に入った曲が、もっとも分かりやすく「袈裟を着たレッド・ツェッペリン」的である「Honnoji」であるとこからしても、やはり私の好みの触感はギターが全面に出て、ドラムの手数が多いことなんだと思うけれど、この4枚目を聞き込んでみると、これがまたあちこちにグッとくる釣り針みたいなポイントのちりばめられた ZAZEN BOYS らしいアルバムだとわかる。
ただ、そのやり方が全開でぶつかりあう形ではなく、抑制されたギリギリのところにあることで、イメージはがらりと変わった。「DARUMA」「YUKATA」「ナベ&サダ」など、このアルバムが出るまでに繰り返し演奏され、しかしアルバムには収録されなかった曲たちのことを考えてみても、このアルバムにかける意気込みが感じられる。
あらためて、ZAZEN BOYS は変わっていくバンドなんだと思うし、それはこれまでのライブでもそうだった。アルバムごとに年代を移り変わっていくような気がするくらい、がらりとやり方を変えても、それでもかわらない個性があるのは向井秀徳という人のブレなさだと思う。そして、それに食らい付いていく ZAZEN BOYS は、ほんと、ストイックにヘンなバンドだ。
これがライブでどう演奏されるのか、そして ZAZEN BOYS がこれからどうなっていくのか、正直なところ全然想像ができない。でもきっと面白いんだろうなと思う。
*1:もちろん今は大好きだけど
*2:http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20050730/p2
*3:http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20050814/p2
*4:これは後になって実感することだけども、向井さんというのはほんとうに、逆境に強い人だと思う。
*5:http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20060421/p1