父の入院

先日、職場で弁当を食べていた時に家族ラインの通知が来て、何の気なしに開いてみると、父親が緊急入院したという知らせだった。その日はすっかり仕事どころではなくなってしまったのだけど、その後、母や下の弟のお陰で諸々の方針が決まり、見舞いは1日2人までとのことなのでスケジュール調整アプリで見舞いの組み合わせを決めたりして、私はちょうど帰国していた上の弟とお見舞いに行くことになった。

弟は日本国内での携帯電話回線を契約していないため、念の為にと早めに待ち合わせをしたところ、そこはさすがにいい大人なのでさらに早めに落ちあうことができてしまい、15分ほどかかるという病院までの道のりは歩いて向かうことにした。
弟はもう3年近くアメリカに単身赴任をしている。
甥っ子もまだ小学生だし、父母もいい歳なので、みんなうっすら帰ってきて欲しいというアピールをしているのだけれど、弟は弟で、海外赴任の方が稼ぎが良いからとなかなか帰国の算段がつかない。

弟はすっかり「教育熱心な親」をやっていて、塾から送られてくるというテスト結果を叔母である私にも見せてくる。甥っ子はとても勉強ができる。勉強を楽しんでいるようでもあり、それはすごくいいことだと思う。でもいまその話をする時間かなあ、などと思いながらその日は面会開始の時間を待った。

父親の病状については聞いていたし、自分もある程度調べてから向かったので、想像通りではあったのだけど、それでも一人でどこにでも行ける状態であった父の弱った様子にはショックを受けたし、それでいて、緊急搬送される際の様子を話しながら自分で大爆笑している父の相変わらずさには安心もした。

自分が入院したときのことを思い出し、暇を持て余しているだろうと、これまでまったく使いこなしていなかったスマートフォン(父が初めて「携帯電話」を契約したのがなんと昨年のことだった)の使い方を教える。faceIDもようやく設定する。希望を聞いて、ラジオや朗読のアプリもDLした。
フリック入力などはもちろん知らない父が、人差し指を使って「みんなありがとう」とLINEに投稿するのを見守り、いろいろと感慨深い気持ちになる。

帰り際、父が弟に「いつ(日本に)帰ってくる?」と聞くと、弟は「来年の夏には帰って来れるようにしたい」と言った。

確約できない話だというのはわかっているので、特にその話は掘り下げず、ただお互い健康に気をつけようねと言い合いながら、帰り道を歩いた。
上の弟とこんなに長く二人きりで話すのは、おそらく、弟の成人祝いに2人で食事に行った時以来かもしれなかった。変わっていくことと、相変わらずなことがある中だけど、きょうだいがいてよかったなと思っているのはずっと後者のままだ。