『AMAZING GRACE』/Jeff Buckley

6月10日に日本盤発売予定の Jeff Buckley のドキュメンタリー『AMAZING GRACE』の試写会*1へ行ってきました。

GRACE AROUND THE WORLD [DVD]

GRACE AROUND THE WORLD [DVD]

DVDは彼の身の回りの人のインタビューに沿った構成で、ビデオクリップやインタビュー、ライブなど、まだ見たことのない映像をたくさん見ることができた。「Eternal Life」のライブ映像とか、ラストの「Hallelujah」とか、見終わった後は思わず拍手しそうになって、やはりライブを見ることができなかったことが、とてもくやしかった。

冒頭、影響を受けた音楽は、と訊かれて「でもやっぱりレッド・ツェッペリン」と答えるジェフの表情にいきなりぐっとくる。Sin-e でのライブ映像以外に、動く Jeff Buckley を見るのはほとんど初めてだったのだけど、歌っている姿には緊迫感があり、全身で音になっているような印象だった。
彼が残した音源はけして多くはないけれど、その中にはすばらしいカヴァー作品がたくさんある。インタビューの中に、たくさんのミュージシャンが入り混じっていてもう誰の真似してるのかわからないよ、と語るジェフの姿があったけれど、彼のカヴァーは有名な「Hallelujah」をはじめとして、Sin-e のライブ盤などを聴いていても全て、彼にしかできない演奏になっていると思う。それは真似(という訳だった気がする)というより、なんだか大仰な言い方だけど、曲そのものになりきっているような印象だ。

インタビューの多くは、誰かがインタビューの中で言っていたように、彼を神格化して語るようになってしまうのだけど、彼の母親が「幼い頃から老成していた」と語っていたことは特に印象深かった。
振り返ってみれば、彼の音楽は、当時の流行からは浮いていたはずだ。『GRACE』が新人のアルバムだなんて今でもちょっと信じられない。でもだからこそ、いつ聴いても色あせない新鮮さがあるのだと思う。
バンドメンバーが『素描』の収録をやりなおすはずだった、という話題で「ジェフの作る曲はとにかくすごくて、きっとすばらしいアルバムになるはずだったのに」と語っていたのがとても切なかった。

私がはじめて『GARCE』を聴いたのはアルバム発売から数年過ぎた頃のことで、でもいつか日本にきたら絶対に、ライブで見たいと思っていた。
でも結局、来日公演は1995年の一度きり。CD屋のバイト中、遅番でやってきた同僚から、訃報を聞いたときのことを今でもよく覚えている。