「獣の樹」/舞城王太郎

久々のノベルスだ、と思って手にとって裏表紙みたら「西暁町」とあったので迷わず買って、そうだよ西暁町の話が読みたかったんだよーとか思いながらわくわくして読んで読み終わって、楽しかったです。

獣の樹 (講談社ノベルス)

獣の樹 (講談社ノベルス)

主人公の名前は「成雄」というところまで読み進めて「獅子朋成雄」の内容を覚えてないことに気づいて、あーと思ったけどもうひとつの成雄「SPEED BOY」*1についてはちゃんと覚えていたのでそのまま読んだ。「SPEED BOY」の軸が走ることにあったのに対して、『獣の樹』はむしろ≪成雄≫のアイデンティティについてのお話だったと思う。
特に成雄が人間の感情について学んでいくところが面白かった。正直に言えば私だって、自分の中に「ない」気持ちがここでは正解なんじゃないかと思うことがある。外れの気持ちを持ったら、誰かに見透かされてしまうんじゃないか…なんて思うことがある。なんで泣いてるんだかなんていちいち言葉にできない。だからこそ、人間である正彦よりも、人間かどうかいまいちよくわからない成雄の方に寄って読んでいたような気がする。
それと同時に、成雄の兄弟になる正彦の信頼できる感じはとても心強くて嬉しくて、そういうのもうまく言葉になんないわけだけど、
ともかく舞城王太郎は、「ビッチマグネット」にも書かれていたように、言葉にならないことの、輪郭をとるように物語をかいてるのかな、なんてことを思いました。
そのためには、細かいことがわりと風速で飛ばされてくようでもあり、正直どんな話だった? って聞かれても上手く説明できない気がする。ただ、ともかく正彦の福井弁(なんですよね)読んでるだけでとても楽しかったです。また西暁町の話読みたい。

ところで最後のページ見たら、この夏は舞城王太郎刊行ラッシュらしく楽しみです。