「ざらざら」/川上弘美

少し前に読んでとても気に入った「パスタマシーンの幽霊」*1と同じく(たぶんそれより前に)雑誌「クウネル」に掲載された掌編を中心とした作品集。「パスタマシーンの幽霊」よりは、じゃっかん、テーマが偏っているし、ひとつひとつのお話も短いです。鞄の中に入れておいて、毎日ちょっとずつ読むのにぴったりな本だったと思う。

ざらざら (新潮文庫)

ざらざら (新潮文庫)

本の中には、いろんなことを考えながら暮らしている、いろんな人がいて、ここで切り取られた瞬間より前にも後にも、続いていつづけているような手触りがある。
例えば、生姜がうまく刻めたとか、煮物に失敗したとか、喫茶店に寄ろうとして寄らなかったとか、風邪をひいたとか。毎日の中で、手を握ったり、開いたりする、その瞬間の前後にも私はいるみたいに。
「パスタマシーンの幽霊」にも登場する“杏子”のお話もあった。切ないお話だったけれど、私はその後の彼女のお話を知っているんだよな、と思いながら読むのは、なんだか不思議でよかった。