「女の子の食卓」/「ミシンとナイフ」

志村志保子さんのことは本屋さんで偶然手にとった「女の子の食卓」で知りました。
1巻を読んだ時の感想を読み返してみると、ヤングアダルト小説に雰囲気が近い、とか書いてあって、そう書いたことをすっかり忘れていた私は、あー確かにとか思ったりする。それくらい長く続いた連載がついに、8巻で完結しました。
なぜかずっと買い忘れていて先週やっと読んだのですが、この最終巻もやっぱりとてもよかった。
1つひとつのお話がとても丁寧に描かれているのは、巻数を重ねたこの最終巻でも変わっていません。「女の子の食卓」は、人と食べ物との間には、生活や成長とともに続く物語があるんだということを、毎回教えてくれたシリーズのような気がしています。
今は食べ物漫画がちょっとブームになっていますが、「女の子の食卓」で描かれるのはあくまでも「主人公の物語」で、その切り口になるのが食べ物であるというところが新鮮なシリーズでした。だから、終わってしまうのは寂しいですが、志村志保子さんの新刊であればまた続きのように読めるとも思う。
最終巻では、ズッキーニの話と、オレンジジュースの話が特に良かったな。
志村志保子さんの新作がとても楽しみです。

「ミシンとナイフ」

女の子の食卓」を読み始めた頃、志村志保子さんの過去作が読みたいと思って探していた絶版コミックスが、先日文庫版になって再発売されました*1。これがほんと、すごくよかった!
女の子の食卓」だけでも、短編の上手い人だなという印象はあったのですが、「食卓」というテーマがあったからか、他にどんな作品を描く人なのか、いまいち想像できていないところもあったのです。だから特に身構えずに読んだこの「ミシンとナイフ」は、いい意味で予想を裏切られる短編集でした。
日常の中にある、少し不思議な出会いや光景や人のこだわりの背後にある物語を、静かな語り口で切り開いていく様子は、そういった設定があるわけじゃないんだけどすこしSFっぽい。
物語の舞台になる時間帯、季節の描き方もとても好きです。
あえて例をあげるなら吉野朔実さんの漫画を初めて読んだときの気持ちに近いような気もする(全然違うんだけど)。
この懐かしいんだけど新鮮な気持ちをなんに例えればいいのか、まだよくわからないのだけど、とてもおすすめの短編集です。

ミシンとナイフ―短編集 (集英社文庫 し 53-1)

ミシンとナイフ―短編集 (集英社文庫 し 53-1)

*1:収録作品は一部異なっています