鍵泥棒のメソッド


楽しかった!
内田けんじ監督の作品は「WEEKEND BLUES」と「運命じゃない人」しか見ていないのですが、それでも丁寧な筋立てとテンポのよさ、物語が展開していってあっと驚いてしまうようなところにたどり着く感じは、やっぱり内田けんじ監督の作品だなって思う。
映画を見に行く前にテレビで見た主演の3人のインタビューで、堺雅人さんが「以前もらった台本(アフタースクール)は一読しただけじゃ意味がわからなかったけれど、今回はわりと筋がシンプルで1回読んでちゃんと理解できました(笑)」と話していて、実際に見終えてみると(アフタースクールはみてないものの)確かにそのとおりだなと感じました。
運命じゃない人」を見たときは、まずあれだけ入り組んだ物語をあのように組み上げたってことに驚いてしまった。でも「鍵泥棒のメソッド」は香川照之さん演じる「殺し屋」のキャラクターに「記憶喪失」という謎が仕掛けられていて、記憶を取り戻すか取り戻さないか、取り戻したらどうなっちゃうのか?って物語の推進力になっているのがうまいなと思いました。
そして、どちらの作品も、登場人物に悪人がいないとか、物語がだれることなく小気味よく展開していくという所が好きだなと思います。あと、たぶん監督の描きたい「恋」も両作品に共通しているテーマだと思う。
広末涼子演じる香苗の姉がこのように言うシーンがあります。

「若い頃は好きな人を思うだけで、心が『キューン』となったことがあったでしょ? でもこの『キューン』のマシーンって、30を過ぎるとたぶん壊れちゃうの」

このセリフって、「運命じゃない人」の

三十過ぎたらもう、運命の出会いとか、自然な出会いとか、友達から始まって序じょに惹かれあってラブラブとか、いっさいないからな。もうクラス替えとか文化祭とかないんだよ。自分で何とかしないと、ずっと1人ぼっちだぞ、ぜったいに、ずーっと。

このセリフに対応してますよね。
つまり、この「30過ぎたら恋できるのか問題」が両作品に共通しているテーマであり、それがどうなるのかはお楽しみですが、ともかく、人生の大事な部分てたぶん滑稽なもので、でも滑稽であることの誠実さみたいなものを、すごく気持ちよく見せてくれるところが、好きだなと思いました。
「アフタースクール」もみないと…!