課外授業ようこそ先輩/宮本亜門さん

いい授業でした。この授業を私も一度は経験してみたかった。
亜門さんが目指したのは「人の気持ちを思いやる」ということを学習する授業。
はじめは童話「赤ずきんちゃん」を題材に、登場人物たちについての考察を促すんだけど、なかなか狙いどおりにはいかない。私が思ったのは、やはり「誰かが考えた作り話」であるということを皆が知っているお話だからこそ、逆に固定観念に縛られてしまうのかなということ。
そこで亜門さんは今度、沖縄で自分自身が食べるためにヤギを殺したことがある、という少々ショッキングな話を告白した。耳をふさいでいる子もいる。教室がしんとなる。でも宮本さんは真摯に話し続ける。
その話のあとに、宮本さんは『子どもたちの戦争』という本から、戦争の直中に投げ出された少女に起きた出来事についての文を朗読し、子どもたちに作文を書いてもらっていた。少女、その母親、少女が助けた少年、そして兵士。それらの人々は、現実に存在している。そのことがたぶん作文を書く子どもたちにも伝わっていたのだろう。発表された作文はとても素晴らしいものだった。テレビでは数人の分しか見られなかったけど、それぞれが自分の言葉で書いているのが伝わってくる。自分達にとってもっとも身近に感じられるであろう少女の立場だけでなく、兵士の立場からだったり、亜門さんが聴かせた戦争のもっと後の出来事について書いたりしている子がいたことが印象に残った。
死者何名、という言葉の中の1人1人に人生があって、感情があって、ということに思いを馳せるということはとても大切なことだと私も思う。
感情を理解するということはとても難しいことだし、人は結局、皆自分自身の感情に照らし合わせてしか他人の思いを量ることは出来ないのかもしれない。
しかしその想像力こそが、人と人とが関わって行く上でもっとも大切な力であり、希望だと私は思う。そして、人が大人になるということは、それだけ多くの時間を使って「経験」を積むことで、その想像力を養うということなのではないかと思う。
最後に、校舎を出る前に、ピロティに飾ってある校歌のレリーフを見ながら、亜門さんがそのメロディを思いだし、声を合わせて歌うというシーンがあった。そう、その歌を歌えるということは、かつてこの「大人の人」が、彼らと同じ学校で学び、いろんなことを経験したという証拠なんだ。そう感じた子もきっといただろう。
すてきな授業だった。いろんな意見を出し合ってる子どもたちを見て、私も小学生の頃の、手を挙げる瞬間のどきどきした感じを思いだしたりした。

子どもたちの戦争

子どもたちの戦争