あちこちで感想をみかけるものの、どこか煙に巻かれてるような、で、どんな話なの? って気になって仕方なくなって、読みました。最近めっきり読書スピードが落ちている私には珍しく、一日で読み終えてしまった!
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/11/29
- メディア: 単行本
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ひたすら乙女を追いかけ、計算尽くしの「偶然」を演出しようと試みる先輩のパートと、乙女の視線を通して語られる奇妙で味わいぶかい世界のようすがかわるがわる描かれていく構成は、最初少しだけ読みにくく感じたものの、ラストまで読み終えてみれば、なるほどね、とほくそ笑んでしまう。つんのめるような文体も勢いを増すほどに滑らかになり、恐れることはない、いざ。とかつい書いてみたくなるこの感じが、まるで講談のようだと思った。イメージだけど。それが詭弁でも酔っ払いでも、後にはじんわりと楽しかった、という気分が競り上がってくる。
中でも、この本のクライマックスともいえる、先輩の自問自答がよかった。その恋は性欲かそれとも自己憐憫か逃避か、そもそも恋とは何であるのか。追いつめられた先輩が最後にぶちあげるアジテーション(p262)のすがすがしさよ。
そんなやつを読む閑があったら、むしろ私を読みたまえ。なかなかオモシロイことが色々書いてあるよ。p80
小説だからこそ、この語り口だからこその面白さ、ではあるんだけど、つい今敏監督が映画化してくれればいいのにーなんて思ってしまいました。特に1話めの李白さん登場場面とか、圧巻だろうなぁ。あとちょっと「福神町綺譚」(id:ichinics:20060414:p1)の雰囲気にも近いとこあるかも。