「この世界の片隅に」下巻/こうの史代

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

あとがきにあるように、『この世界の片隅で』には、「戦時の生活がだらだら続く様子」を描いた作品。この下巻には戦争が終わるまでが描かれています。
歴史もの、というと、やはり政治の世界が描かれることが多いけれど、そのとき、自分と同じような普通の人たちはどうしていたんだろう、というところに、この作品が描かれたんじゃないかと思う。
この漫画を読んでいると、映画や写真などに写る「大群」のひとりひとりにも、今の私と同じように、長かったり短かったりする毎日があるのだということをあらためて考えたりする。誰もが離れ離れになった誰かを探している中で、ひとりを見つけるということの難しさを思い、となりに人がいることの心強さこそが、このタイトルの意味だったのだなと思った。
それから、上巻を読んだときにも感じたけれど、この作品はほんとうに画がすばらしい漫画で、この下巻でいえば冒頭の飛行機雲を見上げる場面や、ラストの見開きまで、ひとつひとつのコマがまるで記憶のように描かれている。場を写し取るのじゃなく、気持ちごと画になっているみたいだ。

すず
この世界の普通で
まともで居ってくれ/p125

ほんとに、すばらしい作品だと思います。あと、周作とのいい場面(p140)でしっかりはずすとこもこうのさん節って感じで好きだ。