夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

あちこちで感想をみかけるものの、どこか煙に巻かれてるような、で、どんな話なの? って気になって仕方なくなって、読みました。最近めっきり読書スピードが落ちている私には珍しく、一日で読み終えてしまった!

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

“先輩" と「詭弁論部」の後輩で彼の意中のひとである “黒髪の乙女” が、目論見とすれ違いと鯨飲の末にの邂逅を果たすまでを活写した現代版伝奇のようなおはなし。
ひたすら乙女を追いかけ、計算尽くしの「偶然」を演出しようと試みる先輩のパートと、乙女の視線を通して語られる奇妙で味わいぶかい世界のようすがかわるがわる描かれていく構成は、最初少しだけ読みにくく感じたものの、ラストまで読み終えてみれば、なるほどね、とほくそ笑んでしまう。つんのめるような文体も勢いを増すほどに滑らかになり、恐れることはない、いざ。とかつい書いてみたくなるこの感じが、まるで講談のようだと思った。イメージだけど。それが詭弁でも酔っ払いでも、後にはじんわりと楽しかった、という気分が競り上がってくる。
中でも、この本のクライマックスともいえる、先輩の自問自答がよかった。その恋は性欲かそれとも自己憐憫か逃避か、そもそも恋とは何であるのか。追いつめられた先輩が最後にぶちあげるアジテーション(p262)のすがすがしさよ。

そんなやつを読む閑があったら、むしろ私を読みたまえ。なかなかオモシロイことが色々書いてあるよ。p80

小説だからこそ、この語り口だからこその面白さ、ではあるんだけど、つい今敏監督が映画化してくれればいいのにーなんて思ってしまいました。特に1話めの李白さん登場場面とか、圧巻だろうなぁ。あとちょっと「福神町綺譚」(id:ichinics:20060414:p1)の雰囲気にも近いとこあるかも。

 セクシーボイスと沖縄県

きのう「セクシーボイスアンドロボ」をみた。まあそうだろうなぁとは思ってたけど、いきなり三日坊主の話で、諸々がっくり。それからモロ下北の露崎商店がバーンと出てきたりして、見なれた風景すぎると、室内のセット部分と外観がつながらないものだなと思いました。
それにしても「わたし…生きたいんだ」って台詞に、画面から目をそらしてしまう私はなんか中二だねと思う。
でも、このドラマの前に見てた県民性がどうとかいう番組で「自分が大好き」な県第1位は沖縄っていうのやってて、「自分好きですか?」って聞かれて「だいすきでーす」なんて迷いなくと答えてるひとたちのまぶしさは、ちょっとうらやましかった。
東京は2位だった気がするけど「自分好きですか?」って聞かれたら、私はまず即答できないんだろうな。好きでも嫌いでもないとか言ったり言い訳したりしそうだ。
でも、そういうの断言したくないのは、言葉にしてそれ気にしたくないからなんだろうなと思う。「私のこと好き?」とか聞かないのも、それに回答されたら回答されたとおりにしなきゃだめなような気がしちゃうから。気弱。

 ありがとうヴォネガット

会ったことも無い小説家の死に、泣けてくるなんてはじめてだ。
ヴォネガットの書いた小説、まだぜんぶ読めてもいないのに、
大好きなんだ。

これがすてきでなくて、ほかになにがある?

っていう叔父さんの台詞、いまもよく思い出す。
きっと青いトンネルくぐって天国までいった、
ヴォネガットさんにたくさんの感謝を。