今年の目標

風の歌を聴け (講談社文庫)
テレビや映画などで欧米人のファミリーっぷりを見ていると、ときどき猛烈にうらやましくなる。
なんの番組だったか忘れちゃったけど、奥さんの力添えで数十年ぶりに父親と和解した男の人の話をちょっと前にテレビでやっていて、それまですごく仏頂面だった男の人が、泣きながら「アイラブユー」とか「アイムプラウドオブユー」とか言って、父親と抱き合ったりしているのを見て、すごくうらやましかった。
私は、人に向かって自分の感情を伝えようというとき、いつもなかなか上手くできない。照れ屋なのか、ただ単に素直じゃないのか、人前で泣いたり喜んだり好意を表明したりというのが少し苦手なのだ。
「尊敬してます」なら言える。でも好きとかいえない。面と向かってなければいくらでも言えるのに、いざ顔を見てみると言えない。この場合、異性の「好きなひと」とかいう話じゃなくて、友達だろうが家族だろうが同じで仲の良い人であるほどその傾向が強い。さらに受けるのも苦手で、友人から、なんというか「好意」みたいなのを改めて口にされると挙動不審になる。
このまえ結婚式のスピーチをしたときも、その辺のコンプレックスが顕著にでてて、結局感極まって泣いて終了。ふがいない。そういや、あがりすぎて新郎新婦入場で「おめでとう」と声かけるべきところで何故か「こんにちは」とか言ってたし。

そんなことを考えていて、ちょっと思いだしたのが「僕は・君たちが・好きだ」という村上春樹の「風の歌を聴け」にでてくるあのDJ(犬の漫才師)の台詞。このシーンはとても好きなシーンなんだけど、この部分を読み返してみて、自分がもしこのDJだったら、と考えてみると、きっとそんなこと思うだけで口にできないんだろうと思ったらちょっとうんざりした。それからぱらぱらとめくっていたら、ちぎった紙でしおりがしてあるところがあった。

「高校の終わり頃、僕は心に思うことの半分しか口に出すまいと決心した。(中略)僕は自分が思っていることの半分しか語ることのできない人間になっていることを発見した」(文庫版P109)

すごい恥ずかしいけど、多分ここにしおりを挟んだのはこの言葉のせいだと思う。最後にこれを読んだのはいつだったか忘れたけど、そういう間違ったクールさを目指すなよ自分という感じだったんだろうな。まったく成長してない自分。
いくら苦手でも、やっぱり口に出して言うってことが大事な場面もあると思うので、今さらながら今年の目標は「思ったことを口にだす」ということにしよう。と思ったとたんに気がめいってきた。
いっそのこと欧米人になって、会うたんびに軽く抱き合ったり、ラブとかプラウドとか臆面も無く口にできる体質を手に入れたい。