「御先祖様万々歳!」

御先祖様万々歳!! コンプリートボックス [DVD]

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第1話を観た時にもちょっと書いたけれど、ようやく全6話を観終わった。とても実験的というか遊び心に満ちた作品でとても面白かった。けれど、押井守監督の作品を意識的に(選んで)見て、その世界観が好きだと思っているから面白いのかもな、とも思う。何の前情報もなしに見たら、かなりびっくりしたかもしれない。
第1話見たときに知ったサイト*1で、この物語は監督曰く「裏うる星やつら」であるというのを知って、ちょっと意識しながら見ていたのだけど、むしろそれは建前で、この物語の中心にあるのはやっぱり「家族とは」という命題を演劇をモチーフとすることで哲学的に考察するというお話だった。なんて断言風に書いてみたけれど、私にはこの作品の面白さをスマートに説明出来る自信はまったくない。
それでも、一番語りやすい部分である「演劇をモチーフとする」というところだけでもこのアニメは充分に面白い。舞台上にある自由さをアニメーションという場に移すとこんなにも予想外の場面展開を作り出せるのか、というのも新鮮だったし、登場人物たちが役者であるがゆえに「演じる自分」を意識しているところが「家族」というものを描くのにぴったりの装置だったように思う。
そのどちらの意味でも、1番面白かったのが第4話の『捲土重来』。ちょっとうろ覚えなのだけど「それでは僕はこれから、どのような存在意義のもとに自らの役割を演じれば良いのだろう」というようなことを主人公が呟くところがあった。この台詞はとても押井守作品らしいと感じるものでもあり、攻殻機動隊へと続くテーマのような気もする。それから、このシーンでは海水浴場が突如として舞台の上に切り替わる、その展開の仕方がとても印象的だった。
全体的に演劇であるということにこだわって作られていたように思うけれど、かといってこれを演劇でやってしまうと演劇の中の演劇になってしまうだろう。アニメでやる演劇だからこそできた世界なんて、こんなアニメが作れるのは押井監督だけだと思う。
押井監督にはこういう軽いのりの作品をまた作ってほしいなあと思ったりします。「御先祖様〜」の雰囲気は制作時期が被っているというだけあって、やっぱり「機動警察パトレイバー劇場版」に近いような気がする。

それから、前にもこの作品のキャラクターデザインはうつのみやさとるさんで、という話を書いたのだけど、作画の中に大好きな田中達之さんもいて、そういえば主人公の造形はリンダキューブのケンに似ているなと思った。それから松本太洋さんの昔の画(ZEROとかくらいかな)にもちょっと似ている。口元とか。とても好みの絵柄の作品だったなぁとしみじみ思う。