ソラニン1巻/浅野いにお

ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

すごく楽しみにしてて、発売日に買ってすぐ読んだんだけど、いろいろ思うところがありつつも、やっぱりなんだか馴染めない、という気持ちが残る1巻だった。
連載開始時に1、2話を読んで、この「ソラニン」はきっと今まで浅野いにおさんが描いてきたことの、総決算のような話になるんだろうなと思いつつ、仕事をしながらバンド活動を続ける彼と、衝動的に仕事を辞めてしまう彼女との同棲生活がやたらとのんびりしていることに違和感を感じたのだけど、その印象は1巻を読み終えても続いていた。

このキビしい時代なんだもの、下を向いて歩こう精神で切り抜けようじゃない

という先輩の言葉を肯定も否定も出来ず、しかし時間とともに選択肢が狭まっていくことへの恐怖を感じる。その種田君の気持ちは痛いくらい分かる。でも、種田君とその彼女にのしかかるあまりにも典型的な「現実」の形と、それに対する彼らの反応には、物語的な嘘くささを感じてしまう。
それはたぶん、これまでの「素晴らしい世界」や「ひかりのまち」にあった、切実さというか、葛藤することにさえも葛藤してしまうような泥臭い不器用さが、この「ソラニン」の主人公たちには感じられないような気がしたからだと思う。
でもたぶん一番居心地が悪いのは、種田君の葛藤を共有するでもなく、傍にいて寄りかかることに自らの「ずるさ」を感じつつ、それでも動こうとしない芽衣子の存在なんだと思う。彼女が彼を支えるでもなく利用するでもなく嫉妬するでもなくただ彼を見ているだけのように感じる、そのことに、私は「やたらとのんびりしている」と感じ、苛立ってしまうのかもしれない。
なんだかいろいろと勝手なことを書いてしまったけれど、このお話の行く末を楽しみにしているのもほんとです。むしろこれからだろうし。

あと、この1巻のラストシーンを読んで、やっぱり浅野いにおさんは映画「ひかりのまち」が相当好きなんだなぁと思った。