アンジェラ

監督:リュック・ベッソン
出先で手持ち無沙汰になり、ふらっと見にいった「アンジェラ」。リュック・ベッソン監督の新作(待望の、6年ぶりのetc)ということなんですが、そういえば私、ベッソン監督の映画とはあんまり相性が良くないんだよなぁということを見始めてから思い出す。すみません。
今日はネタばれです。

とはいえ、私が見たことあるベッソン監督の作品というのは「ニキータ」「レオン」「フィフス・エレメント」くらいなのですけど、それら全ての映画に共通する点といえばヒロイン。同一人物といわれても驚かないくらいキャラクター造形が似ている。まあ、強く、美しく、ショートヘア(主にボブ)の女性が、監督の好みなんだろうなぁと思うし、私も美しくて強い女性は見てて楽しい。リー・ラスムッセンさんもとても美しい。パリの街もモノクロの影像も美しい(ところどころ時間の流れが分かりづらかったものの)。でも。
『アンジェラ』のあらすじは借金地獄で行き詰まった(映画で見る限りはわりと自業自得に思える)男アンドレが自殺を試みようとしたところで天使に出会って救われる、というものです。そういうあらすじも個人的には嫌いじゃない。
嫌いじゃないんだけど、映画を見終わっても、この主人公が変わったようには見えなかったのがとにかく残念。お金は結局アンジェラが稼いでいるし「体を売ったのか!けがらわしい!」みたいに噴きあがっておいて、そうじゃないとわかるとあっさり「ならいいや」みたいな単純さで、最終的には借金相手に「あんたを哀れむよ」って。そりゃないです。最後の最後、借金相手のちんぴらに絡まれる場面でも結局アンジェラにやっつけてもらう。
この映画のテーマはたぶん、《最悪の人生から抜け出すには、まず自分を好きになること》ということだったんだと思います。そして「私はあなたなの」みたいな台詞と、現題が「ANGEL-A」ということで、アンジェラもアンドレも同じ人物、という設定なんじゃないのかなぁと勘ぐっていたのですが、結局は「真実の愛を見つける」というような方向へ。ここも、物語の途中で方向転換したような印象を受けた。

つまり、一言でいえば「アンジェラ」はいわゆる「白馬のお姫さま」もので、ヒロインが人外の存在であるというとこで漫画「ルサンチマン」や「電影少女」やその他いろいろを重ねて見ることもできる。
だけど、それらの物語と比べて、なぜ「アンジェラ」に(特にその脚本に)魅力を感じないかといえば、そこにあるはずの、アンドレの成長、頑張り、もしくはアンジェラへの愛のようなものがなかなか伝わってこないからだと思う。いくら「あなたは優しいひと」とか言われても、そうみえなきゃ説得力も無い。もしくはアンジェラの影みたいなものでもよかった。しかしアンジェラの気持ちの動きにしても、そこに至る伏線は明らかに足りないように思われたし、終盤での感情の動きは唐突に感じられた。
最後の最後まで夢オチだと思ってみていたんだけどなぁ。