「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ [DVD]

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ [DVD]

監督:根岸吉太郎
どこかで感想を読んで気になっていた作品。劇場行けなかったので借りてきて見ました。よかった。
なによりもまず、松たか子さんの表情や所作がとても魅力的に感じる映画でした。様々な笑顔があって、たとえば手を下ろす仕草ひとつに不安になったりもした。DVDのジャケットにもなっている絵も*1ぐっとくるなーと思う。
物語は、金と酒と女にだらしない死にたがりの小説家の夫、大谷と、しっかりものでしたたかな妻、佐知のお話。太宰治の原作はもっと短いお話なのですが、その世界を煮詰めて広げたような脚本がとてもよかった。ただ、キャッチコピーにあるような「愛の物語」というよりも、なんというか、人って面白いなあと思うような映画だった。
解釈を決定づけるような台詞はないので、彼らが本当は何を考えているのか、どうとでもとることができる。特に、佐知役の松たか子さんの、彼女を裏切り続ける夫に対する愛情と、けれど一瞬先には裏切りそうな底知れなさが同居しているかのような表情はすごいと思った。
大谷が佐知をおそれるのは、彼女に見透かされているような気がするからなのだろうなと思う。しかし佐知が、大谷に尽くすのは、なぜなのだろうと思って見ていたのだけど、仕舞いには、そういうものなんだなと思わされてしまった。
美術も素晴らしくて、とくに椿屋のシーンは見ていてとても楽しかったです。