ビルの何階か、窓から高架を走る電車を少し見下ろせるくらいの位置にある店で、私は野菜の煮込み料理を食べていた。白っぽいテーブルに横並びに座る私たちのほぼ目線の位置にオレンジ色のあかりがあり、手を動かすたびに影がついてくる。ずっしりと重い器に並ぶ赤や黄色のパプリカをフォークで順番に刺しながら、私は新宿三丁目から出ているという聞き慣れない名前の電車で終点までいったところに住んでいる人の話を聞いていた。
野菜の酢漬けやら砂肝のオイル煮やらワインやらを追加しつつ、その人の住んでいる町の風景を思い描く。何も無い草原に茶色い道を引き、ブロック塀で囲んで木々を植える。街灯を均等に並べて灯し、木造アパートを糸を引くように組み立てガラス窓を開いてカーテンをまとめる。古い本のにおい。草原の緑を整えつつ、ああ、あそこはとてもいいところですよねと私は相槌をうつ。部屋の中には使い古された赤本があって、受験シーズンですもんね、などとも言った記憶がある。
…という夢を先日みて、夢自体は後半、店になだれ込んできた白スーツ黒シャツの銃撃戦に巻き込まれておしまいだったわけですけども、
人と会話をしているときに、相手の言葉でどんどんイメージが形作られていく頭の中を映像化したら、あんな風になるのかもしれないなと思いました。この文章でそれが伝わるのかいまいち自信がないのですが、なんだかとても楽しかった。