何者/朝井リョウ

朝井リョウさんの作品は「武道館」を読んだことがあるだけだったのだけど*1、「何者」は特におすすめしてもらうことが多く、ちょうど文庫が出ていたので読みました。
そして読んですぐ、出てる本全部読もう、と思いました。そのくらいインパクトがあった。

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

正直「武道館」は自分が好きなアイドルが一部モチーフになっていることもあり、あまり客観的に読むことができませんでした。たぶんあえてファン側の気持ちは画一的に描かれていたのだと思うのだけど、そんなことないよー! みたいな気持ちになる部分も多く、かなり躓きながら読んだと思う。
対してこの「何者」は描かれているのが大学生の就職活動であるということもあり、ある程度は客観的な視点で読み進めていました。でもそれが結局、また物語に巻き込まれる結果を招くとは思いもよらなかった。

「何者」は、就職活動で見せる自分の表裏と、SNSでの表裏を描いたお話。
自分は転職含め就職活動を計3回やっているので、就職活動はもう二度とやりたくないなーしんどいよねーと、ある程度は主人公たちに同調するような気持ちで読んでいた。
同時並行で描かれていた、SNSで語られる自分と実際の自分の齟齬みたいなものについても、自分の学生時代、特に就職活動をやっているような時期にSNSがなくてよかったなとしか感じていなくて、
だから終盤「そうやって自分には関係ありませんよ、みたいな顔してんじゃないよ」って胸倉掴まれるみたいな展開になって、最後はほとんどおそるおそる読んでいたと思う。

ただ、自分のSNSというものに対する感じ方は、この本で描かれているものとは少し違うような気もした。

ほんとうにたいせつなことは、ツイッターにもフェイスブックにもメールにも、どこにも書かない。ほんとうに訴えたいことは、そんなところで発信して返信をもらって、それで満足するようなことではない。/p174

ほんとうにそうだろうか、と思う。
何者でもない自分だとしても、だからこそ、特定の誰かに向けているわけではない言葉に、何らかの核心はあるのではないかと、私はまだ思っている。

*1:あと「桐島、部活やめるってよ」の映画