井の頭線とチョコレートバー

夕方から夜にかけての渋谷発の井の頭線は、いつもものすごく混雑している。発車間際にものすごい勢いで人が押し寄せてきて、でも中学生からずーっと通勤通学すべてを上り電車で通学してきた私にとっては、そんなのはもうなれっこですので、なるべく力を抜き、流れに任せ、なんていうか、あれは向きを変えずに、皆同じ方向に詰め込まれるとうまく行くチームワークだと思うんですけど、そんときに「人間とは」とか「もしもわたしがサトラレだったら」とか、そういういうこと考えはじめるとうまくいかないので、心頭滅却が肝心です。でもときに向かい合って詰め込まれてしまうと、心頭滅却するのは非常に難しい。その日もやっぱりそうでした。

夜9時頃だったかな。映画見た後の渋谷発の井の頭線。始発なので、ホームの右左にとまっているどちらに乗っても方向は一緒。なので私は、より空いている後発の電車に乗る事にした。より空いているとはいっても、発車間際に混雑するのはわかってる。ただ,すでに表面張力で保たれれているような右側の電車に、突っ込んでいくような元気はなく、左電車で大人しく発車を待つことにした。
やがて発車のベルが鳴ると、くっきりとアイラインひいた彼女の目が目の前にあった。ああ、きれいな子だ…とか思うよりもはやく、鉄砲水のような人の波に突き飛ばされて、私はドアに寄りかかった彼女の両脇に腕を付く、いわゆる王子ポーズをとることになってしまった。
でもいかんせん私も女子(子ではないけども)ですので、あんま腕力がない。そのうえ身長が彼女とたいして変わらないので、顔が近すぎて、がんばって自分を支えないとこう、顔と顔がぶつかりかねない状況でした。彼女の手が私のおなかに触ってるのが気になったけど、たぶん私が倒れないように支えてんだろーな、くすぐったいけど、まあ…とか思いつつ顔が動かせないので確認できないまま、電車は下北沢駅についた。
開いた逆側のドアにむかって泳ぐようにして、なんとか電車を降りる。そんで、やれやれ、と思って自分のおなかを見たら、
……べったりと茶色いものがついてて、なんじゃこりゃー!! と思ったらチョコレートでした。どうやら、私のおなかに触ってたのはチョコバーだったみたいです。

まあ要するに、夕方から夜にかけての渋谷発井の頭線は、ものすごく混雑しているので、チョコバーはしまうか食べ終わってから電車に乗ろうっていう話です…。
関係ないけど私は中学生時代、井の頭線で眠るのが好きで、眠ったまま何時間も吉祥寺と渋谷を往復(折り返し運転なのです)し続けた挙げ句、駅員さんに往復しすぎだと怒られたことがあります(ごめんなさい)。