ゴッドスター/古川日出男

ゴッドスター

ゴッドスター

LJUさんの感想(http://d.hatena.ne.jp/./LJU/20071211/p1)を読んでから、読まなきゃ、と思っていた古川日出男さんの新刊。読み終えた瞬間に感じたのは、例えば高速で上昇したエレベーターが目的の階に停止したときの、あの解き放たれるような無重力感。疾走する言葉の生み出す重力というか、前進するその矢印が、ふいに消えてしまった心もとなさだった。終わったのではない。続いているのに見えなくなった。ような気がした。
すごいと思う。単純に、こんなふうに物語るということの、ライブ感というか、分解、再構築のその的確さというか、広いことと広がることの同時性というか、そこに身を任せることの気持ち良さに、私は夢中になるけれど、
しかしもっと、という気持ちがないわけではない。「ロックンロール七部作」および「ベルカ、吠えないのか?」にあったあのスキップを、もっと読みたい気持ちもある。
その反面でこれは、最近の作品では「サマーバケーションEP」や「僕たちは歩かない」に繋がる、強いていえばある時間や場所を拡張していくような物語で、特に「ゴッドスター」は一つのエリアを、一つの人生を、語り直していくものだった、と思う。
そして文章。この文章にあるしかけに、私は読み終えるまで気付かなかった。
以前古川さんのトークショーにいった時、縦書きでも横書きでもリズムをとれる文章を、と古川さんがいっていたことを思い出す。サウンドが文章で風景が物語だ、とも言っていた。
その格好よさは今も続いている。だからこそ、もっといろんな風景を見てみたいと思っている。
サウンドが文章で風景が物語、ということの意味を、もう少し考えてみようと思う。

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トークショー行った時の感想 → id:ichinics:20060506:p1