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 セッション

監督:デイミアン・チャゼル
名門音楽学校に通う主人公と鬼教官の物語。面白かったです。

【内容に触れています】
ジャズドラムを専攻(?)している主人公は、学園一のバンドを率いる教師フレッチャーに出会い、とにかくひたすらしごかれる。偉大なドラマーとして“認められる”ことを目標にしている主人公はフレッチャーのしごきに耐え、血だらけになった手を氷水で冷やしながらひたすら猛特訓するわけですが、その様子は例えば大リーグボール養成ギプスなどで特訓する星飛雄馬星一徹のようでもありました。つまり音楽映画、というよりは旧時代的なスポ根物語なんだと思います。
音楽を題材にした物語といえば、音楽に登場人物の心情を込めることで表現が変化したり、音楽を演奏することの喜びに主題をおいたものが多いかと思いますが、この「セッション」にはそういう要素はほぼ皆無でした。
でもこの題材がジャズであることの意味はちゃんとあって、(ジャズに全然詳しくないので表現に問題があるかもしれませんが)それは舞台の上での「即興」があり得る音楽であるということなんだと思う。
通常、それはプレイヤーの個性やその場の空気との反応であるのだと思うのだけど、この映画の場合は、ステージの上という、「互いに手を出せない場での殴り合い」でした。
観客は完全に空気で、だから主人公の勝負(演奏)に対する観客の反応がどうだったかということはほぼ描かれません。実際、わたしにはこの映画で描かれる演奏のよしあしもフレッチャーが言うテンポの狂いもいまいちわかりませんでした。それでも楽しめる映画だったのは、ラスト、演奏で主導権を奪い合うにいたるまでの前フリに説得力があったからだと思います。
主人公にとってドラムはあくまでも「誰かから認められる」ためのツールだった。その誰かとは、たぶんかつて自分の父親であり、やがてフレッチャーになっていったのだと思う。
しかし、そのフレッチャーから見捨てられ、裏切り、裏切られたところで、主人公はついに承認を求めるのではなく、「good job」とはけっして言わない相手の胸倉をつかむことを選ぶのでした。俺の考えた一番かっこいい復讐ですよ。これに燃えないわけない。というわけでとても楽しかったです!