「LA LA LAND」

監督:デミアン・チャゼル
ライアン・ゴズリングのファンでミュージカル映画も好き、というわけですごく楽しみにしていた「LA LA LAND」、公開初日だった金曜日に見に行ってきました。

アカデミー賞歴代最多タイとなる14部門ノミネートという追い風もあってか劇場は満席。土曜に会った友人とも感想を話せたし、週末にはTwitter等でも感想をたくさん見かけることができてとても楽しいです。やっぱり映画館で映画を見る楽しみのひとつは、同じタイミングでいろんな人の感想を見れることだと思う。
しかも予想外に感想がめちゃくちゃ割れまくっているのも面白い。
私の観測範囲では「賛否」に割れているというより、大絶賛派と、よかったけど云々…派に別れているような気がするんですが、その「よかったけど」の後に続く内容もけっこう色々なので、私の感想も今のうちに書いておこうと思いました。

私の感想をネタばれにならない感じでまとめると、、大好きなシーンも5億点シーンもあるけれど、気になる部分も少なくなく中盤少し飽きてしまったのは否めない…と言う感じです。



【以下内容に触れています。】


美しいオープニングの群舞から、気のすすまなかったパーティに行くまで、ずっと歌って踊ってが続くのが夢見たいに最高だった。特にルームシェアしてるっぽい女の子4人が色違いドレスで道を闊歩するシーンの楽しさといったらなかった。

役者を目指している、でも浮かれた人たちには何となく馴染めない主人公ミア……という描かれ方は多少ステレオタイプにも感じたけど、パフォーマンスの魅力で振り切れる感じ。
ライアン・ゴズリング演じる、いつかジャズの店を開くことを夢見るピアニスト、セブとの運命の再会はそうロマンチックなものではなく――というのもかわいらしかったし、3度目の出会いからの、夜景を見ながらのダンスシーンは2人のチャーミングさが溢れていて最高に最高だった。
セブがミアと別れた後、来た道を引き返していくことで、彼女と歩きたくてついてきたことがわかる、っていう演出にもすごくぐっときた。


最初にうーん、と思ったのは、2人が付き合い出す場面。
彼氏とのディナーを退席して映画館で彼女を待っているはずのセブのもとに向かい、スクリーンのまん前に立ってセブを探す……という演出についてです。色んな人が言及していた場面だけど、個人的にも女優を目指し、スクリーンの中に憧れてる人がああいうことするかなぁ……、というところにひっかかってしまった。絵としてはきれいなんだけど。
それからジャズは会話だ、って演奏者を前にセブが喋り続けている……という場面もちょっと疑問だった…。
もちろん、そんな物分りのよいキャラクターばかりである必要はないと思うし、
例えばセブのジャズに対するこだわりは多少偏屈にも思えるんだけど、彼が神経質にフレーズの練習をし続けていることから、それを愛しているのだということは伝わってくる。
でもこの辺りで躓いてしまったのが乗り切れなかった原因かなと思います。

やがてセブは夢である店の開店資金を貯めるために、最初は気乗りしていなかった友人のバンドに入る決心をする。
2人は出会ったばかりの頃に、ケニー・Gのような音楽が嫌い、という話題で盛り上がるシーンがあって、その友人のバンドはたぶんその系統にあるんですけど、そのバンドに纏わることも、ちょっと馬鹿にしすぎているように感じた。もし自分が、あのバンドのファンだったら、メンバーがこんな態度なのは悲しい。ケニー・Gは私も苦手ですけども。

そこから色々あって、セブはバンドを辞め、ミアは女優デビューし、物語はハッピーエンドを迎える、ように見える。


個人的にはここまでの流れが少々退屈に思えてしまっていたのですが、
画面に「5年後」とでてからがすごかった。
色んな人の感想を見ていると、ここからがだめだったという人と、ここからがよかった、という人にわかれていたと思いますが、私はこれがあったからこそ、この映画を嫌いにはなれない。

5年後、女優として成功したミアはセブでなない男性と家庭を持ち、満ち足りた生活を送っているように見えます。
そこで通りかかったある店に、ミアが「いつか開くセブの店に」と提案したお店のロゴが飾られていることに気付くところで様子が変わる。

ここからの場面は、いわば「If」の物語なんですよね。
もしあのときこうしていたら、あちらを選んでいたら、という分岐の連続で人生は形作られていく。
そして積み重ねられた「If」が2人の再会に巻き戻ったところがこの映画のクライマックスだったと思います。
「現在」が悪いわけではない
でももしも、と考えてしまうことはどんな人の人生にもきっとあり、それでも人生は続く。

ラストの2人の笑顔を見て、そういうことに思いを馳せることができるところがとてもよかった。

ただ、監督は「If」の物語を描きたかったんじゃないのでは、という気もするんです。「LA LA LAND」という言葉がハリウッドを意味するということからも、あくまでも、夢を追う人々が集う街というものを描きたかったのかもしれないなという感触もあり、そういう一言で捉えきれないところが、見る人によって感じることがかなり違うのかもしれません。

あとはミュージカル映画だと思って見に行ったので、もっと歌って踊るのを見たかった、というのもある。特に予告で繰り返しOPの場面を見ていたのでもっと群舞が見たかったな。
……と、いろいろ書きましたが、豪華で美しくてチャーミングな映画であることは確かなので、もちろん見てよかったなと思っています。
とにかくピアノを弾くライアン・ゴズリングが見れるってだけでも5億点でてた。

いろんな人の感想を読んでみたいです。

「セッション」も「ラ・ラ・ランド」も、ラストに1番強烈なものをもってくるという構成が似てるなと思いました。
ichinics.hatenadiary.com