髑髏城の七人「上弦の月」と「下弦の月」は両方見るとさらに楽しい

下弦の月にはまってしまった、という話を先日書いたのですが、その勢いでTwiitterで感想を探して読んでいると、どうやら上弦の月下弦の月とでは、同じ脚本なのに見え方が全然違うらしい、ということが伝わってきて気になってしまい、ついに見に行ってきました上弦の月…!

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私はこれまで、同じ舞台を繰り返し見るということをほとんどしたことがありませんでした。するとしてもその理由は「推しが出ているから」で、今回お目当てのキャストは下弦にいたため、上弦も見るなんて最初は思っていなかったんです。
でもいざ見に行ってみると、こんな風に自分が好きだと思った物語を、同一脚本Wキャストで同時期に見れるというこの環境がものすごく贅沢なことなんだということを痛感しました。とにかく見ていて目が潤うんですよ。喉が渇いている時に飲む水がおいしいみたいに目と耳がおいしくて楽しい…。
そのくらい、上弦と下弦は全く違う舞台でそれぞれ魅力的だった。
同じ脚本なのに、体格や年齢の差、それぞれの解釈による表情や間でこんなにも変わって見えるというのが面白くて仕方ないです(ボーナスシーズンで本当によかったなあ…)。
観に行く前に、ちょうど上弦にはまっている方にあれこれ見所ポイントを聞いたりして予習できたのもよかった。
というわけで、下弦と比較しながらの感想をまとめてみたいと思います。
上弦は12/19の夜公演、下弦については12/27夜公演に見たものでまたイメージが変わっていたのでそこと比較しています。

以下かなりのネタバレです。

捨之介

下弦、宮野真守さんの捨之介は太陽で正義の味方だなと思う。天魔王を救えると思っているし、その力はあったはず。なので最後の対決後、力が及ばなかったことにショックを受け「自分がここに残るから皆は先に行け」と言い出すのだと思います。27日で明らかにここを転換点にしていたことですごく気持ちの流れが整った捨之介になっていた。宮野さんの声がいいことなんて重々承知しているのですが、本当表情が見えなくても声の色で表情が見えてくる演技に進化していて、本当のプロフェッショナルだなと思いました。
しかし上弦、福士蒼汰さんの捨之介は若い。若くて幼くて、天魔王との間に信頼関係があると信じていたのかな、と思いました。その純真さが壊れる様が痛々しい。守ってあげたい捨之介だったなと思います。

蘭兵衛

蘭兵衛は完全に別人でした。
その別人さをざっくり説明すると、下弦、廣瀬さんの蘭兵衛が「沖田総司」だとしたら上弦、三浦さんの蘭兵衛は「土方歳三」にイメージが近いと思った。
下弦の蘭兵衛は殿への思いにとらわれ亡霊になってしまう、儚さから狂気へ落ちていく様子が美しくも切なかったのですが、上弦の蘭兵衛はとにかく強い。その強さゆえに心に隙が生まれてしまったという感じだった。
殺陣も全然違って、下弦が牛若丸なら上弦は「剣豪」って感じだった。天魔王と2人で戦う襲撃シーンの迫力がすごいです。目が足りない。

天魔王

何と言っても天魔王がまっったく違う。
下弦、鈴木拡樹さんの天魔王は「殿」に認められたかったのに、認めてもらえなかった(と本人は思っている)ことで、天に成り代わることを目的として動くようになってしまったように見える(これは初見ではあまり思わなかったのですが、捨の進化に合わせて鈴木さんが軸を定めたのかなと思っています)。
けれど上弦、早乙女太一さんの天魔王は「殿」のことが好きなんですよね。天にとらわれているという意味ではむしろ下弦の蘭兵衛と対になる存在感だと思う(なので上弦天と下弦蘭は再会の瞬間に決別しそう…)。
蘭兵衛、捨之介、生駒などとの関わり方も下弦とは全くアプローチが違うので、上弦を初めて見たときは、同じ話なのに全然違うものを見ている!という興奮がすごかったです。
上弦下弦それぞれに、どうしようもなく目が追ってしまうキャラクターがいるのですが、下弦では圧倒的に蘭兵衛だったのが上弦はもう天魔王から目が離せなかった。早乙女さんの殺陣の圧倒的な強さと美しさ。
最初のシーンではもうあの世から蘇ってしまった怨霊、のように見えて怖くて仕方なかった。でもその印象が徐々に、かわいそう、に変わっていくんですよ…。
ラストシーン、下弦の天魔王は虚勢を剥がされる、哀れな「王になれなかった男」なんですけど、上弦の天魔王は「殿」に再び会いたいと願っただけの小さな子ども、のように見えた。

でもそれもすべて、他のキャラクターとの相互作用でそのように進化してきたのだなと思います。
メインの3人だけでなく、すべてのキャラが上弦、下弦、それぞれの中で生きている。
あの極楽太夫にはこの蘭兵衛と兵庫だし、この霧丸にはこの捨之介、みたいな相互作用がある。
両方見た上で、どちらがうまいとかそういうことではなくて、どちらにも魅力があるし、互いに刺激しあってその魅力がどんどん磨かれていく様を観れる、というのは、長い舞台でWチームならではの楽しみなんだなと思います。
前期が終わったところですが、2月まで舞台は続くので、まだまだ下弦も見に行くし(年始公演にも行きます!)、あともう1回は上弦も見たい。そしてこれまでの髑髏城も見てみたい、と思っています。

以下、上弦の各キャラの印象まとめ。

  • 捨之介(福士蒼汰)…天、蘭、捨の中では最年少に見える(下弦は最年長に見える)。純真無垢な魅力がある捨之介なので、幕が閉じたその後が心配。霧丸が支えてあげて…!
  • 天魔王(早乙女太一)…ほっとけない天魔王。才能も魅力もあるのにそれだけでは満たされないお腹を空かせた子ども。殺陣も綺麗だし、マントや扇子の使い方も美しかった。随所でつまらなそうな顔を見せつつ、生駒に甘えたりするギャップがたまらない。
  • 無界屋蘭兵衛(三浦翔平)…強い。天魔王が蘭兵衛を呼んだのは戦力として欲しかったからかなってくらいしっかり強い。三浦さんはこれが2作目の舞台ということで時代劇も初めて(?)と聞いたのですが、信じられないくらいにうまくてかっこいい。
  • 兵庫(須賀健太)…下弦の兵庫がお兄ちゃんだったら、上弦の兵庫はガキ大将って感じだった。明るくてまっすぐで、だから最後の太夫へのセリフが沁みる.
  • 霧丸(平間壮一)…捨之介と同年代に見える霧丸だった(下弦の霧丸は子どもに見える)。だからこそ、一族のことを思う言葉に責任感を感じる。背負っているものがあるからこその強さがある霧丸。
  • じん平(村木仁)…下弦のおっとうはちょっと宇宙人のようでしたが、上弦のおっとうは可愛いおっとう。最近はおっとうが鎌もって駆け出すシーンですでに泣いてる。
  • 珊底羅の生駒(山本カナコ)…天魔王を慈しむママでした。生駒のラストシーンはこの上弦の生駒が本当切なくて良かったな…。
  • 贋鉄斎(市川しんぺー)…贋鉄斎が頰を切るシーン毎回いてって思います。
  • 渡京(粟根まこと)…上下で一番印象が変わらないキャラかもしれない、けど、年代が全然違うので、皆との関係性が変わってくるのが面白かった。どちらの渡京も好きなキャラです。
  • 極楽太夫(高田聖子)…下弦とは全くの別人。強い姉御なんだけど、実は誰かが守ってあげないとっていう弱さもあるのがいい。FGOで例えるならドレイク船長です。
  • 狸穴二郎衛門(渡辺いっけい)…狸親父という感じで、下弦より裏がありそうだった。

今のところはこんな感じですが、次に見たらまた変わるかもしれない。
本当に楽しいです…。2017年も年末になってすごい勢いで新たなコンテンツにはまってしまいましたが本当に楽しい1年だったという気持ちです。

髑髏城の七人 月 (K.Nakashima Selection)

髑髏城の七人 月 (K.Nakashima Selection)

戯曲も買いました。帰宅してから脳内再演ができる優れもの…。早く円盤も欲しいです。