ラジオ番組*1で高坂希太郎監督作品だと知って気になっていたものの、正直、ポスタービジュアルを見た段階では圧倒的に「小学生向け」という印象でした。
けれど、目に入る評判はとてもよかったし、何より高坂監督*2だし…!というわけで、思い切って見に行ってきました。
そしてこれがとっってもよかった!
物語は、事故で両親を亡くした主人公の「おっこ」が、祖母が経営する温泉宿「春の屋」の若おかみとして、宿の仕事を手伝うことになるというお話。
原作は未読ですが、全20巻にもおよぶ長編ということなので、この劇場版はおそらく複数のエピソードを抽出しながら構成されたものなのかな? と思います。
けれど映画は主人公の心の動きを主軸にしていたこともあり、つぎはぎという印象はまったくなく、映画が終わりそうになった瞬間「まだまだこの世界を見ていたい」と思ってしまうような居心地のよい作品でもありました。
特によかったのは、世界のこちらがわとあちらがわを行き来する際におっこがくぐり抜ける「布団」の場面。ほんのすこしこわくて、でも安心する、手触りや温度すら伝わってくるような親密な描写にとてもぐっときました。
登場するキャラクターもみんなよかった。それぞれの動きに特徴があって生き生きとしていて、見ているのが楽しい。
特に好きだったのは宿の客として登場し、おっこの「年上の友人」となる水領さんです。「魔女の宅急便」でいえばウルスラに近い役回りで、何かあることを感じつつも不躾に踏み込んだりはせず、そっと手を添えるような関わり方が素敵でした。
それからおっこのライバルとなる真月ちゃんもめちゃくちゃよかった。言葉で説明しなくても、おっこが次第に彼女を尊敬し、自分も頑張らねばというエネルギーに変えていくのがじわじわと伝わってくる。ライバルって、そういうものだよね…って胸が暑くなりました。
原作は知らなかったのですが「青い鳥文庫」作品だということで、自分が幼い頃に愛読していた「クレヨン王国」シリーズの雰囲気を少し思い出したりもしました。
季節の移り変わりと、主人公の成長が、細やかに描かれていく様子や、主人公だけに見える幽霊や精霊のような存在もいるところが近いのかな。感情移入…というのとも違って、見ているうちに視線だけ、子どもの頃のそれに置き換えられたような感覚になる物語だと思います。
例えばジブリ作品が大人も子どもも楽しめる作品であるように、この「若おかみは小学生!」も、年齢を問わず、見ているうちに引き込まれてしまう作品だったので、気になっている方は映画館でやっているうちにぜひ、と思いました。
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