しみこむ

最近のみものがおいしい。とくにぬるいのみものがおいしい。つめたいのはあまりすきじゃないので、いつも夏でも熱いものばかり飲んでいるのに、いまこの数日は、少しさめてしまったくらいが、ごくごく飲めて楽しい。
どんどん入る。胃袋がぬるい紅茶でいっぱいになる。リンゴ酢を割って飲み、ほうじ茶を飲み干し、カフェオレに浮かんだ丸いハート形を吸い込む。でもビールの冷たさと、コーヒーの熱さだけは、譲れないよねと思う。
ここ数日は、あたたかいのもうれしい。今年は何度も裏切られているから、おそるおそる、半そでと長そでと組み合わせて服を着るなんてこの時期だけのことかもしれなくて、でもやっぱり寒くて失敗したりして、足りない温度を注ぎ足すように、日向を選んで歩く。
眠るのもたのしい。とくに眠っていいのだいまはと自分を許す瞬間の開放感とともに訪れる沈下の感触、その心地よさを存分に味わいたいがために私は毎晩遅くまで起きているのですというのは嘘だけど、好物は最後に食べるタイプなのは本当。
音楽はすばらしい。帰りのバスの中で「引力」を聞きながら。私は私の、感情の起伏がほとんどない日々を思う。もっと泣いたり笑ったりしたい。会いたい人に会いたいという歌があったような気がする。なかったような気もするけれど、バスの最後部の薄暗い席は安心で、私は少し目を閉じて、寝てしまおうかと思う。のどがかわいた。ちょっと寒い。足りないもの全部埋まって、地球が爆発した後のこと考える。