ディアスポリス1〜4巻

漫画:すぎむらしんいち 原作:リチャード・ウー

ディアスポリス-異邦警察-(1) (モーニング KC)

ディアスポリス-異邦警察-(1) (モーニング KC)

もう4巻がでてた。安定して面白い。
物語の舞台は、近未来の日本。「裏警察」の警官、久保塚が、「貧しさや政治的事情から国に住めず、国を追われ、あるいは荒廃した母国を離れ、それでも難民認定はされず仕方なく異邦人となった」人々を守る中で、様々なトラブルに立ち向かう様を描く。
臓器密売疑惑を追う「闇の奥」。人身売買と契約を裏切ったものへの報復を描いた「黒く長い腕」のシリーズ。そして地下教会と留学生崩れの犯罪集団と対決する「ダーティーイエローボーイズ」が4巻までで完結。次は女詐欺師の話のようです。

原作付きは久々な気がするけど、それでも完全にすぎむらしんいち作品になるのは、やはりこの画面の表現力が圧倒的だからだと思う。特に今回の、まるで香港ノワールのようなアップテンポで混沌とした物語は、すぎむらさんの絵柄にぴったり。
たとえば、すぎむら作品の魅力でもあるセコくて必死で、でも味のある人々の生っぽい描写は、この漫画でも存分に味わえるし、躍動感のある線はキャラクターを当然のごとく描き分ける。うまい。「ホテルカリフォルニア」でも思ったけど、すぎむらさんは、お話の中で動いている人数が多くなると、場面転換や繋ぎのうまさが際立つな。短編と長編の違いは、すぎむらさんの場合だと、そのまま描く人数の多さな気がする。
そしてたとえば、香港やタイや中国を旅行しているときの、あの粒子の粗い空気や建物の奥の暗がりを、コマの向こうにも感じる。
映画のようだ、というのが漫画にとっての褒め言葉なのかどうかはわからないけれど、映像的な漫画だと思う。ぜひジョニー・トーに映画化してほしい。

ペースダウンせずにこのまま突っ切ってほしいなと思います。

ディアスポリス-異邦警察-(4) (モーニング KC)

ディアスポリス-異邦警察-(4) (モーニング KC)